エンディングノートの書き方|法的効力と遺言書との違い・公式の無料ひな形

エンディングノートは書店でも自治体の窓口でも手に入りますが、「どこまで書けば意味があるのか」が分かりにくい道具です。この記事では、法務省と日本司法書士会連合会が無料で公開している公式ノートの記入欄を軸に、書く内容と遺言書との役割分担を整理します。

結論

エンディングノートに法的効力はありません。ただしこれは「エンディングノートを無効にする条文がある」という意味ではなく、民法960条が「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない」と定め、967条がその方式を自筆証書・公正証書・秘密証書の3つに限っているためです。市販や自治体配布のノートはこの3つのいずれにも当たらないので、そもそも遺言として成立していないという言い方が正確です。

だからといって書く意味がないわけではありません。法務省と日本司法書士会連合会は、無料で使えるエンディングノートをPDFで公開しています。財産の在りか・連絡先・医療や介護の希望を家族へ残す道具として使い、「誰に何を渡すか」を決めたいときは遺言書を別に用意する——この役割分担が実務的な結論です。

エンディングノートとは何ですか?

エンディングノートとは、自分に何かあったときに、家族が判断や手続きを進めるために必要な情報を残しておくノートです。法務省と日本司法書士会連合会が公開しているエンディングノートは、次のように説明しています。

エンディングノートとは、自分自身に何かあったときに備えて、ご家族が様々な判断や手続を進める際に必要な情報を残すためのノートです。また、生活の備忘録として、そして、これまでの人生を振り返り、これからの人生を考えるきっかけ作りにするものです。

窓辺の木の机に置かれた花柄の表紙のノート、ペン立て、眼鏡

ここで押さえておきたいのは、公式の説明が「情報を残す」「備忘録」「振り返りのきっかけ」の3つを目的に挙げていて、財産を分ける手段としては位置づけていないことです。相続の場面で効力を持たせたい意思は、この後で説明するとおり遺言書の側に置くことになります。

出典:法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート 〜あなたに届け、わたしの想い〜」(2026年8月12日確認)。

エンディングノートに法的効力はありますか?

ありません。理由は、エンディングノートを名指しで否定する条文があるからではなく、遺言のほうに方式の定めがあるからです。民法960条は次のように定めています。

第九百六十条(遺言の方式) 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

そして967条が、普通の方式による遺言を自筆証書・公正証書・秘密証書の3つに限定しています。市販のエンディングノートや自治体が配布しているノートは、この3つのいずれの方式でもありません。つまり「効力を取り消されている」のではなく、遺言として成立する形になっていないというだけです。

エンディングノート遺言書
書き方を定めた法律特にない(様式は自由)民法960条・967条ほかで方式が法定
財産を移す効力ないある
効力が生じる時点遺言者の死亡の時から(民法985条)
書き直しいつでも自由に直せる方式に従って作り直す必要がある
費用公式の無料PDFがある自筆証書は無料。公正証書は手数料がかかる

出典:e-Gov法令検索 民法960条民法967条民法985条(いずれも2026年8月12日確認)。

この点は自治体も注意書きを出しています。千葉県山武市は、エンディングノートの配布ページに次のように書いています。

【ご注意】エンディングノートには法的な効力はありませんので、財産(相続)などの本格的な意思を残したい場合には遺言書の作成をお勧めします。

東京弁護士会も、「出来ること」を「自由に記載でき、気軽にはじめることができます」と説明する一方、「出来ないこと」として「法的効力はありません」「財産を移転させる効果はありません」と明記しています。同会はさらに、ノートが発見されない場合、発見したときには既に遺産分割を終えていた場合、発見しても家族が従わない場合があると指摘しています。法的効力の話を、実際に起きる不具合へ翻訳した指摘です。

出典:山武市「エンディングノート」東京弁護士会「エンディングノートで出来ること、出来ないこと ─エンディングノートの法的効力─」(いずれも2026年8月12日確認)。

ノートに書いたことが遺言として扱われることはありますか?

「エンディングノートだから絶対に遺言にはならない」とまでは言い切れません。遺言として扱われるかどうかは、書かれたものが民法968条が定める自筆証書遺言の要件を満たしているかで決まるからです。968条1項は、全文・日付・氏名を自書し、これに印を押すことを求めています。

濃い色の木のテーブルに開かれた罫線のノートと、その上に置かれた1本のペン

つまり、ノートの1ページにたまたま全文を手書きし、日付と氏名を書いて押印していれば、その部分が要件との関係で問題になる可能性はあります。逆に、印刷された欄をなぞって埋めただけのページは、自書の要件から離れます。どちらに転ぶかは個別の事情によるので、この記事では判定しません。

実務的な結論はシンプルです。**遺言のつもりで書きたいことがあるなら、ノートとは別に、遺言の方式で書く。**方式ごとの違いと、押印漏れや共同遺言など不備になりやすい点は、遺言書の3つの方式と形式不備を民法の条文から整理した記事にまとめています。

出典:e-Gov法令検索 民法968条(2026年8月12日確認)。

無料で使える公式のエンディングノートはありますか?

あります。法務省と日本司法書士会連合会が「エンディングノート 〜あなたに届け、わたしの想い〜」をPDFで公開しています。市販品を買う前に、まずこれを一度開いてみると、書く項目の全体像がつかめます。

このノートは2部構成です。第1部が記入欄(「エンディングノートを作成してみよう」)、第2部が制度の解説(「いざという時のために『知って安心』」)で、第2部は相続と相続登記・法定相続情報証明・遺言・自筆証書遺言書保管制度・成年後見制度・相談先一覧を扱っています。記入欄と解説が1冊に入っているので、書きながら制度を知る使い方ができます。

木の机に置かれた、色付きのクリップで留められた書類の束と眼鏡

PDFなので、必要なページだけを印刷して書き込むこともできます。書き損じても刷り直せる点は、冊子より扱いやすい部分です。

なお、このPDFには相続登記の義務化を「これから施行される」と書いた箇所があり、作成時点が古い版であることが分かります。制度の施行日は、現在の法務省・法務局のページで確認してください。

出典:法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート」(2026年8月12日確認)。

エンディングノートには何を書きますか?

公式ノートの記入欄をそのまま見るのが早道です。第1部は「わたし自身のこと」と「わたしの財産について」に分かれています。

記入欄の項目
わたし自身のこと名前(フリガナ)/生年月日/血液型/住所/本籍/電話番号(自宅・携帯)/メールアドレス/宗教(仏教・キリスト教・神道・その他)/菩提寺など
もしもの時の連絡先いざというときに連絡したい人、親類や友人、かかりつけ医などを、名前・関係・連絡先で5件分
家系図祖父母から孫までの枠。「思い出せる範囲で書いてみましょう!」と案内されている

**本籍と菩提寺は、子世代が最も答えられない情報です。**戸籍を取り寄せるときも、法要の連絡先を探すときも起点になる欄です。

木の机に置かれた水色の書類ケースと、中に立てられた茶色の仕切り

財産の側は、不動産と、それ以外の資産に分かれています。

記入欄の項目
不動産所在地/地番・家屋番号/共有名義人及び持分/現在の状況/どう処理したいか
貸借している不動産貸主・借主の氏名/住所/所在地/地番・家屋番号/連絡先/契約期間/契約書の有無/保管場所
不動産で家族に伝えること隣地境界・越境物などの近所との申合せ/建て替えの制約/道路の権利関係/地下の埋設物(他人の上下水道・ガス管など)
その他の資産預貯金(金融機関名・支店・口座番号・貸金庫の有無)/借入金・ローン/生命保険など(保険会社・種類・受取人)/有価証券・株式/自動車・貴金属などと保管場所

出典:法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート」(2026年8月12日確認)。

「不動産で家族に伝えること」に隣地境界・越境物・道路の権利関係・地下の埋設物が並んでいるのは、司法書士が関わって作られた様式らしい部分です。どれも登記簿には出てこないのに、売却や解体の段階で問題になります。実家の扱いに迷っている場合は、相続で分けにくい資産の性質を条文と統計から整理した記事もあわせて読んでおくと、この欄に何を書き足すべきかが見えてきます。

預貯金の欄は、亡くなったあとの手続きに直結します。金融機関が求める書類は遺言書の有無で変わるので、銀行の相続手続きで必要になる書類を整理した記事を見ておくと、どの口座を書き出すべきかが判断しやすくなります。

パスワードやネット口座はどこまで書いてよいですか?

公式ノートにはデジタルデータの欄があり、4つの区分が用意されています。

  1. 携帯電話・パソコンのログイン情報
  2. 写真・動画・住所録などの保存データ
  3. メール・SNSなどの情報(各アカウント、ID、パスワード)
  4. オンライン口座(銀行、株式、FX、仮想通貨など)・有料サービス(音楽・動画配信、電子書籍など)の契約状況

白い机の上でノートに書き込みながら、もう一方の手でスマートフォンを持つ手元

ただし、同じページに法務省側の注記が置かれています。

※他人に見られると不正アクセスの可能性もありますので、管理には十分に注意してください。

パスワードの記入欄がある一方で、書いた本人に管理の注意を促している——ここはセットで受け取るべき部分です。エンディングノートは金庫でも遺言書でもなく、家族が見つけやすい場所に置くことを前提にした紙なので、見つけやすさと秘密の保持は本質的にぶつかります。

現実的な折衷案は、事業者名とサービス名(=どこに何があるか)はノートに書き、パスワードは別の場所へ保管して在りかだけを書くという分け方です。とくに④の有料サービスは、解約しない限り引き落としが続くので、家族にとっては契約の一覧そのものが要る欄になります。

出典:法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート」(2026年8月12日確認)。

医療・介護・葬儀の希望はどこまで書きますか?

公式ノートは、「これからのわたし」と「わたしの亡き後」で、判断を委ねる相手と希望を書き分けさせる構成になっています。

記入欄の項目
介護判断を委ねる人/場所の希望/してほしいこと・してほしくないこと
病気・入院病名・余命の告知をどうするか/延命治療・終末医療と尊厳死の希望
葬儀実施するかどうか/規模(密葬・家族葬・一般葬・社葬・直葬)/費用/連絡してほしい人
お墓先祖代々の墓・新しい墓・購入済み・永代供養・散骨・樹木葬・家族に判断を任せる/費用
メッセージ・自分史大切な人へのメッセージ/子どもの頃・学生の頃・社会人の頃・退職してから・最近のこと

出典:法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート」(2026年8月12日確認)。

介護と医療の欄で最初に効くのは、希望の内容より**「判断を委ねる人」を1人決めて書いておくこと**です。家族が迷うのは選択肢そのものより「誰が決めていいのか」だからです。葬儀の欄も同じで、規模の希望より「連絡してほしい人」の名簿のほうが実際には使われます。当日までの流れは、葬儀の流れを喪主の立場から時系列で整理した記事で確認できます。

なお、延命治療や尊厳死の希望は、書けばそのとおりに実施されると決まっているものではありません。実際の判断は医療機関との相談になるため、書いた内容を家族とかかりつけ医に口頭でも伝えておくことが前提になります。

自筆で遺言を書くときのルールは何ですか?

公式ノートは第2部で「自筆で遺言を書くときのルールは4つだけ!!」として、①本文の内容 ②作成日付 ③作成者氏名 をすべて自筆で書き、④作成者の印鑑を自分で押す、と説明しています。あわせて次の4点を注意として挙げています。

「令和8年8月吉日」のような書き方について、公式ノートは避けるよう注意していますが、その一点だけで遺言が無効になると法律効果まで断定できる資料ではありません。ここでは「国の機関と司法書士会が、日にちまで書くよう案内している」という事実として受け取り、実際に書くときは年月日をそのまま入れるのが無難です。

出典:法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート」(2026年8月12日確認)。

法務局に預けると何が変わりますか?

公式ノートは、令和2年7月10日から、自筆証書遺言書を全国の法務局(本局・支局)で保管する「自筆証書遺言書保管制度」が始まったと説明しています。同ノートは家庭裁判所の検認について、自筆証書遺言は必要、ただし法務局に預けた場合は検認が不要、公正証書遺言は不要、と整理しています。

鍵が差し込まれた金属製のロッカーの扉が並んでいる

手数料は手続きごとに決まっています。

手数料
遺言書の保管の申請1通につき3,900円
遺言書の閲覧の請求1回につき1,400円
遺言書情報証明書の交付請求1通につき1,400円
遺言書保管事実証明書の交付請求1通につき800円

出典:法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート」(2026年8月12日確認)。

エンディングノートの記入欄にも「遺言書の作成について」があり、作成の有無と、保管場所を自宅・公証役場・法務局・その他から選ぶ形になっています。遺言書を作ったのに家族が在りかを知らない、という事態を防ぐための欄です。検認や相続放棄をはじめ、亡くなったあとに走り出す手続きの期限は、相続手続きの期限を7日から3年の順に整理した記事にまとめています。

自治体が配っているエンディングノートはありますか?

配布している自治体があります。ここで挙げるのは公式ページを確認できた4市です。全国どこでも配布されているわけではないので、お住まいの自治体の高齢福祉担当課や地域包括支援センターに問い合わせるのが確実です。

名称入手方法
静岡市エンディングノート〜これからの人生を豊かにしていくために〜地域包括ケア推進課・地域包括支援センター・各区高齢介護課で配架。Word版とPDF版をダウンロード可
福岡市マイエンディングノート(簡易版リーフレットあり)情報プラザ(市役所1階)、各区役所の情報コーナー、各区地域保健福祉課などで配布。PDFダウンロード可。令和8年度版は株式会社鎌倉新書と協働で発行
豊橋市私のエンディングノート長寿介護課および各地域包括支援センターで配布(数に限りがあり、なくなり次第終了)。PDFダウンロード可
山武市エンディングノート/終活べんり帳高齢者支援課・各包括支援センター・市社会福祉協議会の窓口で配布。令和6年4月に株式会社鎌倉新書との協定に基づき改訂

出典:静岡市福岡市豊橋市山武市(いずれも2026年8月12日確認)。

**福岡市と山武市のノートは、民間企業(株式会社鎌倉新書)と協働で発行されていることが公式ページに明記されています。**自治体が配っていても、中身が役所だけで作られているとは限りません。良し悪しの話ではなく、発行主体を知って受け取るという程度の話です。

静岡市のノートは目次が8つに分かれており、法務省の様式と大枠は共通しています。何冊も集める必要はなく、書きやすいものを1冊選べば足ります。

書いたあとに何をしますか?

エンディングノートは、書き上げた時点が完成ではありません。静岡市は、自市のノートについて次のように説明しています。

状況に応じて、希望や意向も変化することから、書き直しやすいように、ページを切り離して新しい用紙を挟みやすい仕様となっています。

ノートに書き込んでいる手元と、開いたページ

自治体が公式に「書き直す前提の仕様にした」と書いていることは、そのまま使い方の指針になります。連絡先・口座・契約中のサービスは1年も経てば変わります。誕生日や年末など、開く日を決めておくと放置されにくくなります。

もう一つ、東京弁護士会が挙げていた3つの不具合(発見されない/発見が遅い/従わない)は、書いたあとの運用でかなり減らせます。

終活の中でエンディングノートをどのタイミングで手を付けるかで迷う場合は、終活を緊急度別に3段階へ整理した優先順位マップを先に見ておくと、期限のある手続きと、そうでない準備を分けて考えられます。

出典:静岡市「エンディングノート」(2026年8月12日確認)。

市販のエンディングノートを買う必要はありますか?

法務省と日本司法書士会連合会のPDFは無料で、記入欄と制度解説の両方が入っています。まずはこれを印刷して書き始めれば、費用はかかりません。

そのうえで、市販品や自治体版が向く場面もあります。紙の冊子で手元に置きたい場合、ページを差し替えられる仕様が欲しい場合、地域の相談先が載っているものが欲しい場合です。

逆に、有料版だから法的な効力が付く、ということはありません。効力は方式の問題であって、ノートの価格とは関係しません。選ぶ理由は使い勝手の側にあります。

よくある質問

エンディングノートと遺言書は、どちらを先に書けばよいですか? 決まった順番はありませんが、財産の分け方に決めたいことがあるなら遺言書の方式で別に書く必要があります。エンディングノートには法的効力がないため(民法960条・967条)、財産を移す意思はノート側では実現できません。連絡先や医療の希望を先に書き出す進め方が現実的です。

エンディングノートに決まった書式はありますか? 法律上の決まりはありません。ただし、法務省と日本司法書士会連合会が公開しているエンディングノートの記入欄が、事実上の標準的な項目リストとして使えます。自分自身のこと・連絡先・家系図・不動産・その他の資産・デジタルデータ・介護と医療の希望・葬儀とお墓・メッセージという構成です。

ノートにパスワードを書いてもよいですか? 公式ノートにはID・パスワードの記入欄がありますが、同じページに「他人に見られると不正アクセスの可能性もありますので、管理には十分に注意してください」という注記が付いています。サービス名や契約の一覧はノートに書き、パスワードそのものは別に保管して在りかだけを書く、といった分け方が現実的です。

自治体のエンディングノートはどこでもらえますか? 公式ページを確認できたのは静岡市・福岡市・豊橋市・山武市の4市で、いずれも高齢福祉の担当課や地域包括支援センターなどの窓口で配布し、PDFのダウンロードもできます。すべての自治体が配布しているとは限らないので、お住まいの自治体の高齢福祉担当課へ問い合わせてください。

ノートに書いた葬儀やお墓の希望は、そのとおりになりますか? 法的な拘束力はないため、そのとおりに実行されると保証されるものではありません。東京弁護士会も、ノートが発見されない場合や、発見しても家族が従わない場合があることを指摘しています。希望を実現したい部分は、家族へ口頭でも伝え、財産に関わる部分は遺言書の方式で残すことが前提になります。

まとめ

本記事は一般的な制度と手続の流れをまとめたものです。個別の判断は弁護士・司法書士・税理士など各分野の専門家、または各自治体の担当窓口にご確認ください。