死亡で銀行口座が凍結されるのはいつ?|死亡届では止まらない理由と仮払い制度の上限
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親が亡くなった直後、葬儀の費用や当面の支払いをどこから出すかという話は、たいてい「口座はいつ止まるのか」という不安と一緒にやってきます。
インターネット上には「死亡届を出すと口座が凍結される」という説明が今も数多く残っています。ところが金融機関が自分の名前で公開している案内を読むと、そうは書かれていません。起点として書かれているのは、届出ではなく遺族からの連絡です。
この記事では、全国銀行協会と各金融機関の公式案内、そして民法と家事事件手続法の条文だけを使って、いつ凍結されるのか、凍結されると何が止まるのか、凍結後に払い戻しを受ける2つの制度とその上限、の順に整理します。銀行ごとの必要書類と集める順番は主要5行の必要書類の違いをまとめた記事が扱っているので、ここでは重ねません。
結論
**口座が凍結されるのは、死亡届を出した時ではなく、金融機関が相続の連絡を受けた時です。**全国銀行協会は「相続の連絡と同時に、お亡くなりになられたお客さま(被相続人)の口座での取引(預金の入出金等)は、原則として制限されます」と案内しています。市区町村の戸籍の窓口と金融機関は、この点でつながっていません。
凍結された口座から払い戻しを受ける制度は2つあります。ひとつは金融機関の窓口で単独請求できる民法909条の2の制度で、相続開始時の預貯金債権額 × 3分の1 × その相続人の法定相続分で計算した額まで、かつ同一の金融機関ごとに150万円が上限です。もうひとつは家庭裁判所の審判による制度(家事事件手続法200条3項)で、条文上の定額の上限がない代わりに、遺産分割の審判または調停が申し立てられていることが前提になります。
**どちらも「先にもらえるお金」ではありません。**払い戻した分は、後の遺産分割で取得したものとして精算されます。

出典:全国銀行協会「預金相続の手続の流れ」、e-Gov 民法909条の2、e-Gov 家事事件手続法200条(いずれも2026年8月13日確認)。

銀行口座が凍結されるのはいつですか?
**金融機関に相続の連絡が入った時点です。**全国銀行協会は、預金相続の手続の流れを説明したページでこう注記しています。
なお、相続の連絡と同時に、お亡くなりになられたお客さま(被相続人)の口座での取引(預金の入出金等)は、原則として制限されますので、ご留意ください。
出典:全国銀行協会「預金相続の手続の流れ」(2026年8月13日確認)。
同じことを、個々の金融機関も自分の言葉で書いています。確認できた範囲を並べます。
| 金融機関 | 公式ページに書かれている停止の起点 |
|---|---|
| 全国銀行協会 | 「相続の連絡と同時に(略)口座での取引(預金の入出金等)は、原則として制限されます」 |
| 三井住友銀行 | 手続きのStep1「お亡くなりになったご連絡」で「すべての入出金を停止していただきます」 |
| りそな銀行 | 「ご連絡をいただいた後、お亡くなりになったお客さまの入出金を停止させていただきます」 |
| みずほ銀行 | WEB受付フォームまたは電話で連絡した時点で入出金を停止 |
| 楽天銀行 | 「相続のご連絡をいただいた時点で相続手続きの開始となり、口座名義人(被相続人)さま口座のご利用を停止いたします。」 |
比較日: 2026年8月13日時点
出典:全国銀行協会「預金相続の手続の流れ」、三井住友銀行「相続の手続方法」、りそな銀行「相続手続の流れ・必要書類」、みずほ銀行「大切な方が亡くなられたら」、楽天銀行「相続のお手続き」(いずれも2026年8月13日確認。三井住友銀行・りそな銀行・みずほ銀行の記載は2026年8月9日に確認したもの)。

つまり凍結は、亡くなった日に自動で起きるものではありません。**遺族が連絡したその時に起きます。**逆に言えば、連絡した瞬間から引き出しも引き落としも止まるということでもあります。連絡は避けられない手続きですが、何が止まるかを知ってから電話するかどうかで、その後の数週間の慌ただしさは変わります。
死亡届を出すと自動的に凍結されますか?
**いいえ。市区町村へ死亡届を出したことが、そのまま金融機関に伝わる仕組みにはなっていません。**この記事で確認した金融機関の公式案内は、いずれも起点を「連絡」としており、「死亡届の提出」を起点として書いているものはありませんでした。
ただし、ここを「連絡しなければ使い続けてよい」と読むのは危険です。理由は3つあります。
**1つめは、亡くなった時点の預金が相続財産だからです。**口座の名義が親のままでも、亡くなった後に動かしたお金は、他の相続人に対して説明が求められる可能性があります。誰が、いつ、いくらを、何のために引き出したのかを記録に残しておかないと、遺産分割の話し合いの場で不信の種になります。
**2つめは、記録が残るからです。**りそな銀行は凍結中の取扱いとして「記帳=通帳のご記入はご利用いただけます」と案内しています。凍結後も、他の相続人が通帳を記帳して入出金を確認できるということです。
出典:りそな銀行「相続手続の流れ・必要書類」(2026年8月9日確認)。
**3つめは、相続放棄を検討している場合に判断が難しくなるからです。**この点は後の節で条文の範囲だけ説明しますが、財産に手を付ける前に専門家へ相談すべき論点があります。

口座が凍結されると、何が止まりますか?
**引き出しと預け入れができなくなり、口座振替(引き落とし)が止まります。**りそな銀行は、りそな銀行・埼玉りそな銀行・関西みらい銀行・みなと銀行に共通する案内のなかで、凍結中の取扱いを項目ごとに示しています。
| 取引 | 公式ページの記載 |
|---|---|
| お引出し | 取扱いできません |
| お預入れ | 取扱いできません |
| お振込みの受取 | 先方の銀行に連絡のうえ、振込依頼人さまの指示によりお取扱い |
| 口座振替 | お引落し(お支払い)できなくなります |
| 記帳 | 通帳のご記入はご利用いただけます |
比較日: 2026年8月9日時点
出典:りそな銀行「相続手続の流れ・必要書類」(2026年8月9日確認)。
実務でいちばん効いてくるのは、口座振替が止まることです。電気・ガス・水道、通信料、保険料、そして施設を利用していれば利用料まで、親の口座から自動で落ちていたものが一斉に止まります。だから各行は、連絡の案内と同じ場所で変更を促しています。三井住友銀行は「公共料金等の定期的な引落しや、家賃の振込等の予定がある場合は、早めに引落口座・振込口座の変更手続をお取りください」と書き、りそな銀行も家賃等の受取予定がある場合は振込指定口座を早めに変更するよう案内しています。
ここで押さえておきたいのは、引き落としが止まることと、契約が終わることは別だという点です。支払いの経路が消えても、契約そのものは解約の手続きをするまで残ります。とくにネット上のサービスは、親の口座やカードにひもづいたまま遺族から見えなくなりがちです。契約の洗い出し方はスマホとネット上の契約を家族が扱えるようにするデジタル終活の手順にまとめています。
さらに、**凍結後は遺族が立て替える場面が出てきます。**楽天銀行は、相続手続きで残高証明書などを発行する際の手数料について、当行より指定の口座を案内するとしたうえで「口座名義人(被相続人)さまの口座からのお引落としはできかねます」と明記しています。手続きに必要な費用でさえ、故人の口座からは払えないということです。
出典:三井住友銀行「相続の手続方法」、りそな銀行「相続手続の流れ・必要書類」(いずれも2026年8月9日確認)、楽天銀行「相続のお手続き」(2026年8月13日確認)。

凍結された口座からお金を引き出す方法はありますか?
**あります。全国銀行協会は「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」として、2つの制度を並べて案内しています。**同協会のリーフレットは冒頭に「改正民法で設けられた2つの払戻し制度」という見出しを置き、家庭裁判所の判断による制度と、家庭裁判所の判断を経ない制度に分けて説明しています。
| 家庭裁判所ルート(家事事件手続法200条3項) | 窓口ルート(民法909条の2) | |
|---|---|---|
| 前提 | 遺産分割の審判または調停が申し立てられていること | 前提となる申立ては不要 |
| 手続きの場所 | 家庭裁判所へ申立て、審判を得る | 金融機関の窓口で単独で請求する |
| 金額の上限 | 家庭裁判所が仮に取得させると認めた金額。条文上の定額の上限は書かれていない | 計算式による額。かつ同一の金融機関ごとに150万円 |
| 条文上の条件 | 債務の弁済・相続人の生活費の支弁その他の事情による必要性が認められ、かつ他の共同相続人の利益を害しないこと | 使途の限定は条文にない |
| 後の扱い | 後日の遺産分割で調整が図られる | 遺産の一部の分割により取得したものとみなされる |
比較日: 2026年8月13日時点
出典:全国銀行協会「ご存知ですか? 遺産分割前の相続預金の払戻し制度」(PDF)、e-Gov 民法909条の2、e-Gov 家事事件手続法200条(いずれも2026年8月13日確認)。

一般に「仮払い制度」と呼ばれているのは、このうち右側の窓口ルートです。ただし全国銀行協会が正式名称として使っているのは「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」で、家庭裁判所ルートも同じ名前のなかに入っています。金融機関に問い合わせるときは、この正式名称で伝えると、どちらの制度の話をしているのかがはっきりします。
仮払い制度で払い戻せるのはいくらまでですか?
**「相続開始時の預貯金債権額 × 3分の1 × その相続人の法定相続分」で計算した額までです。ただし同一の金融機関ごとに150万円という上限があります。**根拠は民法909条の2の条文です。
各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(略、預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。
この「法務省令で定める額」が150万円です。民法第909条の2に規定する法務省令で定める額を定める省令(平成30年法務省令第29号)は「民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額は、百五十万円とする。」と定めています。
出典:e-Gov 民法909条の2(2026年8月13日確認)。上限額は民法第909条の2に規定する法務省令で定める額を定める省令(平成30年法務省令第29号・公布 平成30年11月21日)による。
計算の順番を、数字を入れて追ってみます。ある銀行に600万円の預金があり、相続人が配偶者と子2人だとします。子1人の法定相続分は4分の1なので、600万円 × 1/3 × 1/4 = 50万円が、その銀行でその子が単独で請求できる額になります。配偶者の法定相続分は2分の1なので、600万円 × 1/3 × 1/2 = 100万円です。
同じ銀行の預金が3,000万円だった場合、配偶者の計算は 3,000万円 × 1/3 × 1/2 = 500万円になりますが、同一の金融機関からの払戻しには150万円の上限があるため、実際に受け取れるのは150万円までです。


この制度を説明した記事の多くは「150万円まで引き出せる」とだけ書いていますが、それだけでは足りません。次の4点をセットで理解しておく必要があります。
- **式が先で、150万円は頭打ちです。**計算した額が150万円に届かなければ、受け取れるのは計算した額までです。誰でも150万円を受け取れる制度ではありません。
- **150万円は金融機関ごとです。**条文は「預貯金債権の債務者ごとに」と書いています。債務者とは預金を預かっている金融機関のことなので、取引先が複数あれば、それぞれで別に判定されます。1人あたりの合計額の上限ではありません。
- 書類は単独でそろいません。「単独で権利を行使できる」のは請求の話であって、必要書類には相続人全員の戸籍が含まれます(次の節)。
- **後で精算されます。**条文は、権利を行使した預貯金債権について「当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす」と続けています。先に受け取った分は、遺産分割のときに自分の取り分から差し引かれる形になります。
家庭裁判所の制度には150万円の上限がないのですか?
**条文に定額の上限は書かれていません。ただし、遺産分割の審判または調停が申し立てられている場合の制度です。**家事事件手続法200条3項は次のように定めています。
前項に規定するもののほか、家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権(略)を当該申立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは、その申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部をその者に仮に取得させることができる。ただし、他の共同相続人の利益を害するときは、この限りでない。
出典:e-Gov 家事事件手続法200条(2026年8月13日確認)。
全国銀行協会のリーフレットも、この制度について「生活費の支弁等の事情により相続預金の仮払いの必要性が認められ、かつ、他の共同相続人の利益を害しない場合に限られます」と説明しています。

読み方の注意が2つあります。**1つめは、これが一般的な手順ではないこと。**条文が前提にしているのは、すでに遺産分割の審判か調停が申し立てられている状態です。話し合いが進んでいる家庭が最初に選ぶ手段ではありません。**2つめは、金額の見通しをこの記事では示せないこと。**いくらを仮に取得させるかは家庭裁判所が判断する事柄で、条文からは導けません。
出典:全国銀行協会「ご存知ですか? 遺産分割前の相続預金の払戻し制度」(PDF)(2026年8月13日確認)。
払戻しを受けるには、どんな書類が要りますか?
**窓口の制度でも、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍と、相続人全員の戸籍が必要です。**全国銀行協会のリーフレットは、必要書類を制度ごとに分けて示しています。
| 制度 | リーフレットに挙げられている書類 |
|---|---|
| 家庭裁判所ルート | 家庭裁判所の審判書謄本(審判書上確定表示がない場合は、さらに審判確定証明書も必要)/預金の払戻しを希望される方の印鑑証明書 |
| 窓口ルート | 被相続人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)/相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書/預金の払戻しを希望される方の印鑑証明書 |
比較日: 2026年8月13日時点
出典:全国銀行協会「ご存知ですか? 遺産分割前の相続預金の払戻し制度」(PDF)(2026年8月13日確認)。
**「単独で払い戻せる」は、「1人で書類がそろう」という意味ではありません。**出生から死亡までの連続した戸籍は、転籍や婚姻をたどって複数の市区町村から取り寄せることになります。相続人全員の戸籍も要ります。「明日にでも150万円下ろせる」と考えていると、書類集めの段階で足が止まります。
同じリーフレットは「書類を頂いた後、相続預金の払戻しまでには、内容の確認等のため一定の時間を要します」とし、さらに「遺言相続のためこれらの制度を利用できない場合などもありますので、お取引金融機関にお問い合わせください」とも注記しています。遺言書がある場合の扱いは、取引先の金融機関に確認してください。

取引先が複数ある場合に効くのが、法務局の法定相続情報証明制度です。戸除籍謄本等の束と相続関係を一覧にした図を登記所に提出すると、登記官の確認を経て、認証文の付いた写しが無料で交付されます。一覧図は申出日の翌年から5年間保存され、その間は再交付を受けられます。三菱UFJ銀行・三井住友銀行・りそな銀行は、戸籍関係書類の代わりに使える旨を公式に示しています。詳しい使い方は主要5行の必要書類の違いと法定相続情報一覧図の扱いで整理しています。
出典:法務局「法定相続情報証明制度について」(2026年8月9日確認)。
戸籍をさかのぼる作業が進まないときや、相続人が遠方にいて書類が集まらないときは、手続きの代行を扱う事業者に相談する選択肢もあります。たとえば相続アシストに相続手続きの代行を問い合わせるという方法があります。費用と対応範囲は事業者ごとに違うため、依頼する前に見積もりの内訳を確認してください。
凍結される前に引き出しておいたほうがいいですか?
**この記事では、引き出すべきかどうかの判断は示しません。**個別の事情によって結論が変わる論点で、一般論として答えを出せる場所ではないからです。書けるのは、条文がどうなっているかまでです。
民法921条は、相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときを法定単純承認の事由としています(1号)。ただし、保存行為と民法602条に定める期間を超えない賃貸はこの限りでない、とも書かれています。また同条3号は、限定承認や相続放棄をした後であっても、相続財産の全部もしくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、または悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったときを、同じく法定単純承認としています。
**何が「処分」に当たるかは、条文には書かれていません。**個別の事情によって判断されるため、「葬儀費用ならよい」「いくらまでならよい」といった線引きは、この記事では示せません。相続放棄を検討している場合は、預金の引き出しを含めて財産に手を付ける前に、家庭裁判所または弁護士・司法書士に相談してください。
出典:e-Gov 民法921条(2026年8月13日確認)。

相続放棄そのものには3か月の期限があり、起算点は「自己のために相続の開始があったことを知った時」です。期限と申述の流れは相続放棄の3か月の起算点と家庭裁判所への申述手続きにまとめています。**放棄を検討しているなら、口座に触れる前にそちらを読んでください。**順番が逆になると、選べる道が減る可能性があります。
ネット銀行やネット証券も同じですか?
**「銀行」で一括りにはできません。**確認できた範囲では、銀行は連絡が起点、証券会社は書類の提出が起点になっている例があります。
楽天銀行は「相続のご連絡をいただいた時点で相続手続きの開始となり、口座名義人(被相続人)さま口座のご利用を停止いたします。」と案内しています。一方、楽天証券は「必要事項をご入力いただき、戸籍謄本や印鑑登録証明書等をご提出いただきましたら、故人様の口座に制限(ロック)がかかり、積立による買付や新規のお取引はできなくなります。」としています。つまり証券会社では、連絡した段階ではなく書類が届いた段階でロックがかかる形です。
出典:楽天銀行「相続のお手続き」、楽天証券「相続」(いずれも2026年8月13日確認)。

これは2社の公式ページで確認できた内容であって、すべてのネット銀行・ネット証券に当てはまるものではありません。手続きの流れも連絡先も金融機関ごとに違い、変更もされます。取引先の公式ページで、その時点の案内を確認してください。
ネット専業の金融機関には、通帳もカードも残らないことがあります。そもそもどこと取引していたかを遺族が見つけられるかが先の問題になるわけです。生前にできる準備は故人のスマホとネット上の契約を家族が引き継ぐためのデジタル終活の準備にまとめています。
銀行に連絡する前に、何を整理しておけばいいですか?
連絡は避けられませんし、遅らせることを勧めるものでもありません。ただ、**連絡した瞬間に止まるものが分かっていれば、その前の30分でできることがあります。**各行の公式案内から導けるのは、次の項目です。
- 親の口座から何が引き落とされているかを、通帳と取引明細で一覧にする(電気・ガス・水道・通信・保険・施設の利用料など)
- そのうち支払いを続ける必要があるものについて、引落口座を誰の口座に変えるかを決める
- 入金の予定があるかを確認する。りそな銀行は振込の受取について「先方の銀行に連絡のうえ、振込依頼人さまの指示によりお取扱い」としており、家賃等の受取予定がある場合は振込指定口座の変更を早めにと案内しています
- 相続放棄を検討している人がいるかを、家族のあいだで先に確認する
- 取引先の金融機関を洗い出す(通帳・キャッシュカード・郵便物・スマートフォンのアプリ)
- 当面の支払いに、誰の資金を、いくら立て替えるのかを決め、領収書を残す取り決めをしておく

このメモは、後から相続人どうしで説明し合うときの土台にもなります。誰が何を立て替えたかを書き残しておけば、遺産分割の話し合いで「立て替えた分をどう扱うか」を数字で議論できます。
なお、口座の手続きと並行して、期限のある手続きがいくつも走り始めます。全体の順番は7日・3か月・10か月・3年に分けた相続手続きの期限チェックリストにまとめており、自分の場合の目安日を出したいときは相続手続きの期限チェッカーに「知った日」を入れると一覧で確認できます。
出典:りそな銀行「相続手続の流れ・必要書類」、三井住友銀行「相続の手続方法」(いずれも2026年8月9日確認)。
よくある質問
死亡届を出したら口座は凍結されますか? 市区町村への死亡届と、金融機関の口座の停止は別の手続きです。全国銀行協会は「相続の連絡と同時に、お亡くなりになられたお客さま(被相続人)の口座での取引(預金の入出金等)は、原則として制限されます」と案内しており、この記事で確認した各行の公式ページも起点を「連絡」としています。ただし、連絡していないから自由に使ってよいという意味ではありません。亡くなった時点の預金は相続財産にあたるため、動かした分は他の相続人へ説明できるようにしておく必要があります。
仮払い制度では、いくらまで払い戻せますか? 民法909条の2の制度では、相続開始時の預貯金債権額に3分の1を掛け、さらにその相続人の法定相続分を掛けた額までです。これに加えて、同一の金融機関ごとに150万円という上限が法務省令で定められています。150万円は誰でも受け取れる定額ではなく、計算した額がそれを超えたときの頭打ちです。
150万円は1人あたりの合計額ですか? いいえ。条文は「預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする」と書いています。ここでいう債務者は預金を預かっている金融機関のことなので、上限は金融機関ごとに判定されます。取引先が複数ある場合、それぞれで別に計算されることになります。
払い戻したお金は、そのままもらえるのですか? いいえ。民法909条の2は、権利を行使した預貯金債権について「当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす」と定めています。全国銀行協会のリーフレットも、これらの制度で払い戻された預金は後日の遺産分割で調整が図られると案内しています。先に受け取ったお金は、最終的に自分の取り分から差し引かれる形で精算されます。
家庭裁判所の制度なら150万円を超えて払い戻せますか? 家事事件手続法200条3項に、定額の上限は書かれていません。ただしこの制度は、遺産の分割の審判または調停の申立てがあった場合のものです。相続財産に属する債務の弁済や相続人の生活費の支弁その他の事情による必要性が認められ、かつ他の共同相続人の利益を害しないことが条件で、いくらを仮に取得させるかは家庭裁判所が判断します。金額の見通しをこの記事で示すことはできません。
凍結中でも通帳の記帳はできますか? りそな銀行は、凍結中の取扱いとして「記帳=通帳のご記入はご利用いただけます」と案内しています。取扱いは金融機関によって異なる可能性があるため、取引先の案内で確認してください。
出典:全国銀行協会「預金相続の手続の流れ」、全国銀行協会「ご存知ですか? 遺産分割前の相続預金の払戻し制度」(PDF)、e-Gov 民法909条の2、e-Gov 家事事件手続法200条(いずれも2026年8月13日確認)、りそな銀行「相続手続の流れ・必要書類」(2026年8月9日確認)。
まとめ
- 口座が止まる起点は死亡届ではなく、金融機関への連絡。全国銀行協会・三井住友銀行・りそな銀行・みずほ銀行・楽天銀行の公式案内が、いずれも連絡を起点として書いている
- ただし「連絡しなければ使ってよい」ではない。亡くなった時点の預金は相続財産で、動かした分は他の相続人への説明が必要になる
- 凍結中は引き出しも預け入れもできず、口座振替(引き落とし)が止まる。公共料金や施設の利用料の引落口座は、先に付け替えを考えておく
- 引き落としが止まっても、契約は解約するまで残る。手続きの手数料さえ故人の口座からは落とせない(楽天銀行)
- 払戻しの制度は2つ。窓口ルート(民法909条の2)は預貯金債権額 × 1/3 × 法定相続分で、金融機関ごとに150万円が上限
- 家庭裁判所ルート(家事事件手続法200条3項)には条文上の定額の上限がないが、遺産分割の審判・調停の申立てがあることが前提で、金額は家庭裁判所が判断する
- どちらの制度でも、払い戻した分は後の遺産分割で精算される
- 窓口ルートでも出生から死亡までの連続した戸籍と相続人全員の戸籍が要る。複数行で手続きするなら法定相続情報一覧図(交付手数料無料)を検討する
- 相続放棄を検討しているなら、口座に触れる前に家庭裁判所または弁護士・司法書士へ相談する
口座が止まることは避けられません。避けられるのは、止まってから慌てることです。何が止まり、何が止まらないかを先に把握しておけば、連絡の電話は「怖い手続き」ではなく、段取りのひとつになります。
本記事は一般的な制度と手続の流れをまとめたものです。個別の判断は弁護士・司法書士・税理士など各分野の専門家、または各自治体の担当窓口にご確認ください。
出典(2026年8月13日確認)
- 全国銀行協会「預金相続の手続の流れ」
- 全国銀行協会「ご存知ですか? 遺産分割前の相続預金の払戻し制度」(PDF)
- e-Gov 民法909条の2
- e-Gov 民法921条
- e-Gov 家事事件手続法200条
- 楽天銀行「相続のお手続き」
- 楽天証券「相続」
- りそな銀行「相続手続の流れ・必要書類」(2026年8月9日確認)
- 三井住友銀行「相続の手続方法」(2026年8月9日確認)
- みずほ銀行「大切な方が亡くなられたら」(2026年8月9日確認)
- 法務局「法定相続情報証明制度について」(2026年8月9日確認)