デジタル終活とは|スマホのロックとネット銀行・サブスクを遺族に引き継ぐ準備
親のスマホを預かったものの、画面ロックが開かない。ネット銀行に口座があったらしいが、どこの銀行かも分からない。クレジットカードの明細に、月1,000円ほどの見覚えのない請求が残り続けている——こうした相談は、実際に全国の消費生活センターへ寄せられています。
「デジタル終活」は、その手前で使われる言葉です。ただ、この分野は情報の質が大きく割れていて、出どころの分からない手順や、ロックを開ける「裏技」の話が混ざりがちです。
この記事が材料にするのは、国民生活センターが令和6年11月20日に出した報道発表資料と、Apple・Google・ネット銀行それぞれの公式ヘルプだけです。亡くなったあとにできることは驚くほど少なく、生前にできることは意外とはっきりしている——一次資料を並べると、その形が見えてきます。
結論
**故人のスマホやパソコンのロックを、遺族があとから解除するのは困難です。**国民生活センターは、デジタル遺品をめぐる特徴の1つ目に「故人のスマホやパソコン等のパスワードがわからない場合、第三者がロック解除することは困難」を挙げています。Googleも、故人のアカウントに関する問い合わせについて「パスワードや他のログイン情報をお伝えすることはできません」と公式ヘルプに明記しています。
そして、**契約は自動では止まりません。**同センターは「契約者が死亡していたとしても、事業者はその事実を知る手段がありませんので、相続人となる遺族等が解約手続きを行う必要があります」と書いています。死亡届は役所へ出すものであって、サブスクの事業者へ届くわけではないからです。
だからデジタル終活の中心は、事後の突破ではなく、生前に「どこに何があるか」を残し、アクセスできる人を指名しておくことになります。パスワードの残し方は国民生活センターが具体的な手順まで案内しており、AppleとGoogleは死後に自分のデータへアクセスできる人をあらかじめ指名する仕組みを公式に用意しています。
出典:国民生活センター「今から考えておきたい『デジタル終活』-スマホの中の“見えない契約”で遺された家族が困らないために-」(令和6年11月20日 報道発表資料)、Google アカウント ヘルプ「故人のアカウントに関するリクエストを送信する」(いずれも2026年8月13日確認)。

デジタル終活とは何ですか?
デジタル終活とは、スマートフォンやパソコンの中のデータと、インターネットで契約しているサービスを、自分に何かあったときに家族が扱えるよう生前に整理しておくことです。国民生活センターは令和6年11月20日、この言葉を表題に掲げた報道発表資料を公表しています。
対になる「デジタル遺品」について、同資料は次のように注記しています。
「デジタル遺品」には明確な定義はないが、本資料では、デジタル機器を通して確認できるデータやインターネットで契約したサービスのことを指し、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器そのものは含まない。
公的機関が「明確な定義はない」と自ら書いている点は、この分野を読むときの目安になります。言葉の定義が定まっていないので、同じ「デジタル遺品」という語でも、端末という物のことを指す文章と、中のデータや契約のことを指す文章が混在します。

この記事は同センターの用法にそろえて、端末そのものではなく、中のデータとネット上の契約を扱います。端末を含めた家財の片付けにいくらかかるかは、遺品整理の費用相場を間取り別に整理した記事にまとめてあります。物としての処分と、中身の手続きは別の作業だと考えたほうが進めやすくなります。
背景として、同資料は総務省の調査を引いています。**スマートフォンでインターネットを利用する人は、20〜59歳の各年齢層で約9割、60代で78.3%、70代が49.4%**という数字です(総務省「令和5年通信利用動向調査の結果」・令和6年6月7日公表)。70代でも半数近くがスマホでネットを使っている以上、「うちの親は関係ない」と言い切れる家庭は少なくなっています。
出典:国民生活センター「今から考えておきたい『デジタル終活』」(令和6年11月20日 報道発表資料)、総務省「令和5年通信利用動向調査の結果」(いずれも2026年8月13日確認)。
実際にどんなトラブルが起きていますか?
国民生活センターの同資料は、全国の消費生活センター等に寄せられた相談から3件を紹介しています。要旨は次のとおりです。
| 相談の内容 | 受付 | |
|---|---|---|
| ロックが開かない | 亡くなった兄が生前にネット銀行で口座を開設していたようだ。契約先を確認するため携帯電話会社の店舗でスマホの画面ロックの解除を依頼したが、「初期化はできるが、画面ロックの解除はできない」と言われた | 2024年2月・60歳代男性 |
| 手続きが進まない | コード決済サービス事業者の相続手続きが1か月以上たっても終わらない。指示に従って戸籍謄本や住民票等を送付しているが、残高がいくらあるのかも回答がない | 2023年10月・50歳代女性 |
| 請求が止まらない | 夫が亡くなり携帯電話を解約した。その後、クレジットカードの利用明細書に約1,000円の不明な請求があった。サブスクの事業者に問い合わせると「すぐに解約するためにはIDとパスワードが必要だ」と言われた | 2024年7月・80歳代女性 |
出典:国民生活センター「今から考えておきたい『デジタル終活』」(令和6年11月20日 報道発表資料)(2026年8月13日確認)。
3件はロックが開かない/実態がつかめない/請求が止まらないという、性質の違う困りごとに分かれています。同センターもこの3つを、デジタル遺品の特徴として整理しています。
なお、これは消費生活センター等に寄せられた相談事例であって、件数を集計した統計ではありません。「よくあるトラブル上位3件」といった読み方はできない点に注意してください。

故人のスマホのロックは、あとから解除できますか?
**遺族や第三者があとから解除するのは困難です。**国民生活センターは特徴の1つ目として、次のように書いています。
故人のスマホやパソコン等のパスワードがわからない場合、第三者がロック解除することは困難
相談事例1がまさにこの形で、携帯電話会社の店舗では「初期化はできるが、画面ロックの解除はできない」という回答でした。初期化は中身を消す操作なので、中を確認したい遺族にとっては選びにくい選択肢です。

プラットフォーム側も同じ立場を取っています。Googleは故人のアカウントに関するリクエストのページで、家族や代理人と連絡を取り、適切と判断した場合にはアカウントを閉鎖し、場合によってはコンテンツを提供するとしたうえで、こう明記しています。
パスワードや他のログイン情報をお伝えすることはできません。
そして、リクエストに応じるかどうかは「慎重な審査のうえ決定されます」とも書かれています。あとから頼めば開けてもらえる窓口がある、という前提は成り立ちません。
この記事では、ロックを突破する方法は扱いません。書けるのは、各社が公式に用意している手続きまでです。その公式の手続きが、後半で扱うAppleとGoogleの事前指名の仕組みにあたります。
出典:国民生活センター「今から考えておきたい『デジタル終活』」(令和6年11月20日 報道発表資料)、Google アカウント ヘルプ「故人のアカウントに関するリクエストを送信する」(いずれも2026年8月13日確認)。
亡くなったあと、サブスクは自動的に止まりますか?
**止まりません。**国民生活センターは、この点をはっきり書いています。
サブスクは解約手続きをしない限り請求が続いてしまう
なお、契約者が死亡していたとしても、事業者はその事実を知る手段がありませんので、相続人となる遺族等が解約手続きを行う必要があります。
役所へ死亡届を出しても、それが動画配信やアプリの事業者へ伝わる仕組みはありません。遺族が名乗り出るまで、契約はそのまま生き続けます。
ここで、亡くなったあとの家計にはもう一方向の力もかかります。銀行口座のほうは、遺族が銀行へ連絡した時点で止まるからです。全国銀行協会は預金相続の手続きの説明で、「相続の連絡と同時に、お亡くなりになられたお客さま(被相続人)の口座での取引(預金の入出金等)は、原則として制限されます」と案内しています。りそな銀行(および埼玉りそな銀行・関西みらい銀行・みなと銀行)は、凍結中の取扱いを表で公開しており、口座振替については「お引落し(お支払い)できなくなります」と明記しています。
| 亡くなったあとの動き | |
|---|---|
| サブスク・アプリの契約 | 解約手続きをしない限り請求が続く(事業者は死亡を知る手段がない) |
| 引き落とし先の預金口座 | 銀行へ相続の連絡をした時点で入出金が制限され、口座振替も引き落とせなくなる |
出典:国民生活センター「今から考えておきたい『デジタル終活』」(令和6年11月20日 報道発表資料)、全国銀行協会「預金相続の手続の流れ」、りそな銀行「相続手続の流れ・必要書類」(いずれも2026年8月13日確認)。
つまり、引き落としの経路は止まるのに、契約そのものは生きているという状態が生まれます。カード払いのサブスクなら請求は別の口座へ向かって続き、口座振替のサービスなら未納として残ります。どちらにしても、契約の一覧を作って1つずつ解約する作業からは逃げられません。
銀行側の手続きで何を集めるかは行ごとに違います。主要行が求める書類と、集める順番は銀行の相続手続きに必要な書類を5行分そろえて比べた記事にまとめてあります。

ネット銀行の相続手続きは、店舗のある銀行と何が違いますか?
**入口が窓口ではなく電話とウェブになり、書類の送り先が郵送に一本化されるのが大きな違いです。**ここでは、相続手続きの流れを公式ページで公開しているネット銀行の例として、楽天銀行の記載を見ます。
| 楽天銀行の公式ページの記載 | |
|---|---|
| 利用停止のタイミング | 「相続のご連絡をいただいた時点で相続手続きの開始となり、口座名義人(被相続人)さま口座のご利用を停止いたします」 |
| 手続きの流れ | 相続の申し出(電話)→ 銀行から書類の発送 → 必要書類の準備・提出 → 払戻し等の手続き |
| 残高証明書 | 1通につき524円(税込)。相続人・代理人・遺言執行者・その他相続権利者のいずれか1名の依頼で発行 |
| 手数料の払い方 | 銀行が指定する口座へ振り込む。「口座名義人(被相続人)さまの口座からのお引落としはできかねます」 |
| 戸籍謄本の省略 | 「法定相続情報一覧図の写し」を提出する場合、戸籍謄本の提出は原則不要 |
| 連絡先 | カスタマーセンター 0120-776-910(受付9:00〜17:00・平日土日祝) |
出典:楽天銀行「相続のお手続き」(2026年8月13日確認)。
手数料を故人の口座から引き落とせないという一文は、実務では地味に効きます。口座が止まった後の費用は遺族が立て替える形になるためです。
もうひとつ、**証券口座は銀行とは仕組みが違います。**楽天証券は公式ページで「資産の引き継ぎには、資産を引き継ぎされる方(相続人)の弊社口座が必要です」としています。株式や投資信託は現物のまま移す必要があるので、受け取る側にも同じ会社の口座が要る、という理屈です。
| ネット銀行(楽天銀行の記載) | ネット証券(楽天証券の記載) | |
|---|---|---|
| 取引が止まる時点 | 相続の連絡をした時点で口座の利用を停止 | 戸籍謄本や印鑑登録証明書等を提出した後に口座へ制限(ロック)がかかる |
| 受け取る側の準備 | 払戻しの手続き(相続人の同行口座を求める記述は公式ページにない) | 資産の引き継ぎには相続人自身の同社口座が必要 |
| 残高の確認 | 残高証明書を発行(1通524円・税込) | 申込前には案内できない。書類確認後に閲覧専用IDとパスワードを送付 |
| 残高証明書の費用と日数 | 1通につき524円(税込) | 書類確認後10日〜2週間程度で郵送。1通目のみ無料 |
| 提出書類の形式 | 印鑑証明書は発行から6ヶ月以内の原本 | 公的書類は写しを提出。原本は返却されない |
出典:楽天銀行「相続のお手続き」、楽天証券「相続」(いずれも2026年8月13日確認)。
証券口座には、もうひとつ期限のある仕事がつながっています。故人に譲渡益や配当があった場合の準確定申告です。楽天証券は、書類確認後に送る閲覧専用IDでログインして確定申告サポートを参照するよう案内しており、譲渡損益の確認手段として位置づけています。期限と起算点は準確定申告の期限と必要になる場合を条文から整理した記事を参照してください。
なお、**各社の手続きは変わります。**この記事の内容は2026年8月13日時点の各社公式ヘルプの記載です。ネット銀行では社名の変更も実際に起きているので、手続きに入る前に必ず各社の現在のページを開いてください。

契約先が分からないとき、どうやって調べますか?
**まず、契約書面が家の中に無いことを前提にしてください。**国民生活センターは、探し方が難しくなる理由をこう説明しています。
オンラインで契約するサービスは、契約書面が紙ではなくメール等で交付されているケースがあり、遺族が簡単に見つけられないことがあります。
紙の通知が届かないので、机の引き出しを探しても契約の一覧は出てきません。手がかりになるのは、クレジットカードの利用明細と、預金口座の口座振替の履歴です。どちらも「毎月同じ金額が同じ相手へ動いている行」を拾えば、契約先の名前にたどり着けることがあります。
そして、事業者名さえ分かれば道は開けます。同センターは次のように書いています。
なお、ID・パスワードがわからない場合でも、契約先事業者が特定できれば、遺族から連絡することで、解約等に応じてもらえるケースが多くみられます。
ロックが開かないことと、解約できないことは別の問題だということです。中を見られなくても、相手が分かれば連絡はできます。

証券口座については、別の調べ方が案内されています。同資料の注記は、故人が株の取り引きをしていたか不明な場合、証券保管振替機構(ほふり)に開示請求(有料)を行うことで、証券口座の開設先を調べることが可能だとしています。手数料と請求方法はこの記事では扱いません(同機構の案内で確認してください)。ここで押さえたいのは、「どの証券会社に口座があるか」を調べる公的な仕組みが存在するという一点です。
出典:国民生活センター「今から考えておきたい『デジタル終活』」(令和6年11月20日 報道発表資料)(2026年8月13日確認)。

生前にできる準備は何ですか?
国民生活センターは、事前の対策を4つに分けて案内しています。どれも費用をかけずにできるものです。順に見ていきます。
| 国民生活センターが挙げている対策 | |
|---|---|
| 1 | ロック解除できるようにしておく(パスワードの残し方に工夫を加える) |
| 2 | 利用しているサービス名・ID・パスワードを整理しておく |
| 3 | エンディングノートを活用する |
| 4 | 事前に自分のデータへアクセスできる人を指名しておく |
出典:国民生活センター「今から考えておきたい『デジタル終活』」(令和6年11月20日 報道発表資料)(2026年8月13日確認)。
1つ目には、悩ましさが正面から書かれています。同センターは、パスワードは第三者に知られないよう管理すべきもので「日頃から共有しておくことは思わぬトラブルにもなり得ます」としたうえで、緊急時の工夫としてこう案内しています。
手順1:名刺大の紙にパスワード等を記入し、パスワード部分に修正テープを2〜3回重ね貼りしてマスキングして保管しておきます。※万が一、誰かが修正テープ部分を削ってパスワードを見たことに気付いた場合は、すぐにパスワードを変更するなどして対処します。または、パスワードをそのまま書かず、家族にだけわかる合言葉(「パートナーの誕生日」など)を記載する方法もあります。
手順2:遺族が必要なときにコインなどで修正テープ部分を削ってパスワードを把握します。
削った跡が残るので、見られたことに気づける——これがこの手順の要点です。生前は隠しておきたい、死後は伝わってほしい、という相反する要求に対する現実的な折り合いのつけ方になっています。合言葉に置き換える案も同じ発想で、紙を拾った他人には意味が分からず、家族には分かるという状態を作ります。


3つ目のエンディングノートについては、同センターが法務省・日本司法書士会連合会の無料PDFを名指しで案内しています。このノートにはデジタルデータの記入欄があり、ログイン情報・保存データ・メールやSNS・オンライン口座と有料サービスの4区分に分かれています。ただし同じページに「他人に見られると不正アクセスの可能性もありますので、管理には十分に注意してください」という注記も置かれています。記入欄はあるが、素で書くことは勧められていないという構造です。
書き方と入手先は、エンディングノートの書き方と公式の無料ひな形を整理した記事にまとめてあります。この記事とあわせて読むと、サービス名と契約の一覧はノートに書き、パスワードそのものは名刺大の紙で別に保管するという分け方が組み立てられます。
親と一緒に進めたい場合は、生前整理を親に切り出す言い方とタイミングを整理した記事が参考になります。デジタルの話は「財産を寄こせ」と誤解されにくいので、切り出しの入口としては比較的こじれにくい題材です。
出典:国民生活センター「今から考えておきたい『デジタル終活』」(令和6年11月20日 報道発表資料)、法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート 〜あなたに届け、わたしの想い〜」(いずれも2026年8月13日確認)。
Appleの「故人アカウント管理連絡先」とは何ですか?
**自分の死後にApple Accountの特定のデータへアクセスできる人を、自分で選んでおく仕組みです。**Appleの公式サポートページは、次のように説明しています。
| Apple公式サポートページの記載 | |
|---|---|
| 制度の説明 | 「故人アカウント管理連絡先は、自分の死後に自分のApple Accountの特定データにアクセスできるよう自ら選択しておく人のことです」 |
| アクセスできるもの | 写真、メッセージ、メモ、ファイル、デバイスのバックアップなど |
| アクセスできないもの | 故人のApple Accountで購入された映画、音楽、ブック、サブスクリプションや、iCloudキーチェーンに保管されているお支払い情報、パスワード、パスキーなどのデータ |
| 申請に必要なもの | 故人が生成したアクセスキーと、故人の死亡証明書 |
| 日本での特則 | 「日本の場合は死亡証明書ではなく、アカウント所有者の死亡の記載がある戸籍謄本が必要です」 |
| 必要な環境 | iOS 15.2、iPadOS 15.2、またはmacOS Monterey 12.1以降を搭載したApple製デバイスと、2ファクタ認証 |
| 指名できる人数 | 複数名を指名できる。指名された人は、故人のアカウントデータを完全に削除するなどの決断も下せる |
| アクセスキーの渡し方 | iMessageで送信するか、控えをプリントして手渡す・遺産相続の書類と併せて保管する |
出典:Apple サポート「Apple Accountの故人アカウント管理連絡先を追加する方法」(2026年8月13日確認)。
日本語で書かれた解説では見落とされがちですが、日本からの申請では死亡証明書ではなく戸籍謄本が要るとApple自身が書いています。書類要件は国や地域によって異なる、という但し書き付きの記載です。
もうひとつ実務的に重いのが、購入した映画・音楽・ブックやサブスクリプションにはアクセスできないという部分です。これはAppleがこの機能で提供する範囲の話であって、デジタルコンテンツ一般が相続できるかどうかという法律上の結論ではありません。各社の規約がどうなっているかは、サービスごとに違います。
そして、指名された人はデータを完全に削除する判断もできるとされています。複数名を指名できるぶん、誰を指名するかは慎重に決める場面だと言えます。

Googleの「アカウント無効化管理ツール」とは何ですか?
**一定の期間アカウントを利用していない状態が続いたときに、データの一部を指定した相手と共有したり、相手へ通知したりするための仕組みです。**Googleのヘルプは次のように説明しています。
| Google公式ヘルプの記載 | |
|---|---|
| 制度の説明 | 「ユーザーが一定の期間自分のアカウントを利用していない状態が続いた場合に、そのアカウント データの一部を共有したり、他のユーザーに通知したりするための手段です」 |
| 指定できる人数 | 10人まで。すべての種類のデータを共有するか、特定の種類のみを共有するかを選べる |
| 電話番号の扱い | 「信頼できる連絡先のみが実際にあなたのデータをダウンロードできるようにすることを唯一の目的として電話番号を使用します」 |
| 亡くなった後の申請 | 家族や代理人と連絡を取り、適切であると判断した場合には故人のアカウントを閉鎖する。場合によってはコンテンツを提供することもある |
| 応じないこと | 「パスワードや他のログイン情報をお伝えすることはできません」。応じるかどうかは「慎重な審査のうえ決定されます」 |
| 申請の3つの入口 | 故人のアカウントを閉鎖する/故人のアカウントから資金を取得するためのリクエストを送信する/故人のアカウントからデータを取得する |
出典:Google アカウント ヘルプ「アカウント無効化管理ツールについて」、同「故人のアカウントに関するリクエストを送信する」(いずれも2026年8月13日確認)。
AppleとGoogleで思想が少し違います。**Appleは「死後に」という前提で連絡先を指名させ、Googleは「使われなくなったら」という条件で発動させます。**Googleのツールが何か月の未使用で動くのかは、公式ヘルプの本文からは読み取れませんでした。設定画面で期間を確認してください。
事後の申請窓口はGoogleにもありますが、パスワードは渡さないという線は動きません。事前に設定しておくかどうかで、遺族の負担がまったく変わる部分です。
デジタル遺品の整理を業者に頼むという選択肢はどうですか?
**先に確認しておきたいのは、この記事で挙げた事前の準備がすべて無償でできるということです。**国民生活センターが示す4つの対策は、紙とペンと、AppleやGoogleの設定画面だけで完結します。有料の役務を検討するのは、その後で構いません。
そのうえで、デジタル遺品の整理を有料で請け負う事業者はあります。公開されている役務のメニューを眺めると、国民生活センターが挙げた3つの困りごとと、売られているものがきれいに対応していることが分かります。
| 困りごと | 対価が付いている役務の例 | |
|---|---|---|
| 入口 | ロックが開かない | パソコン・スマートフォンのパスワード解除、初期化 |
| 本体 | 何を契約していたか分からない | ID・パスワード一覧の作成、オンライン取引の有無の確認、写真やアドレス帳の移行 |
| 出口 | 契約が止まらない | 有料サービスの解約手続き、SNSの退会とデータ削除、ブログの閉鎖 |
裏返せば、**この3つを生前に自分で潰しておけば、外部に頼む理由はそのぶん減ります。**アクセスできる人を指名し、契約の一覧を作り、パスワードの在りかを家族に伝える——順番としてはここが先です。
この記事は、特定の事業者を勧めることも、その適法性を評価することもしません。依頼を検討する場合に確認しておきたいのは、次の3点です。
- **料金の出し方は事業者ごとに違います。**役務ごとの個別料金と一括のパックが併存していることが多く、この記事では「相場」と呼べる共通の水準を確認していません。複数社の料金表を自分で並べてください
- **ロック解除は、頼めば開くというものではありません。**解除できなかった場合に料金が発生するのかどうかを、申し込む前に書面で確認してください
- 無償でできることが残っていないかを先に見てください。AppleとGoogleの事前指名は、本人が生きているあいだにしか設定できません

よくある質問
デジタル終活は何から始めればよいですか? 契約の一覧を作るところからです。クレジットカードの利用明細と、預金口座の口座振替の履歴を1年分見て、毎月同じ金額が同じ相手へ動いている行を書き出します。国民生活センターは、サービス名・ID・パスワードを整理しておくことを事前の対策の2つ目に挙げています。パスワードそのものは、一覧とは別の場所に保管するのが安全側の運用です。
故人のスマホのロックを、携帯電話会社の店舗で解除してもらえますか? 国民生活センターが紹介している相談事例では、店舗で「初期化はできるが、画面ロックの解除はできない」と回答されています。同センターも、パスワードが分からない場合に第三者がロック解除することは困難だと整理しています。あとから開ける前提ではなく、生前に故人アカウント管理連絡先やアカウント無効化管理ツールを設定しておく前提で考えてください。
IDやパスワードが分からなくても、サブスクは解約できますか? できる場合があります。国民生活センターは「ID・パスワードがわからない場合でも、契約先事業者が特定できれば、遺族から連絡することで、解約等に応じてもらえるケースが多くみられます」と案内しています。中身を見られないことと、解約できないことは別の問題です。まず事業者名を特定してください。
Appleの故人アカウント管理連絡先を使うとき、日本では何が必要ですか? Appleの公式サポートページは、申請に必要なものとして、故人が生成したアクセスキーと故人の死亡証明書を挙げたうえで、「日本の場合は死亡証明書ではなく、アカウント所有者の死亡の記載がある戸籍謄本が必要です」と記載しています(2026年8月13日確認)。アクセスキーは故人が生前に発行して渡しておくものなので、亡くなった後には用意できません。
死亡届を出せば、ネット銀行の口座は凍結されますか? 役所へ出す死亡届と、銀行の手続きはつながっていません。全国銀行協会は「相続の連絡と同時に、お亡くなりになられたお客さま(被相続人)の口座での取引(預金の入出金等)は、原則として制限されます」と案内しており、楽天銀行も相続の連絡を受けた時点で口座の利用を停止すると明記しています。凍結のきっかけは、遺族からの連絡です。
まとめ
- 「デジタル遺品」に明確な定義はないと国民生活センター自身が注記しており、同センターは端末そのものではなく、機器を通して確認できるデータとネットで契約したサービスを指す語として使っている
- 相談事例はロックが開かない/実態がつかめない/請求が止まらないの3つに分かれる。消費生活センター等に寄せられた事例であって、件数の統計ではない
- パスワードが分からない場合、第三者によるロック解除は困難。Googleは故人のアカウントについて「パスワードや他のログイン情報をお伝えすることはできません」と明記している
- サブスクは自動では止まらない。「事業者はその事実を知る手段がありません」というのが同センターの説明で、解約は遺族の仕事として残る
- 一方で預金口座は、銀行へ連絡した時点で入出金が制限され、口座振替も止まる。契約は生きているのに引き落としの経路だけが消える、という状態が起きる
- ネット銀行は電話とウェブが入口で、証明書の手数料を故人の口座から引き落とせない(楽天銀行の記載)。ネット証券は相続人自身の口座が必要で、ロックがかかるのは書類提出後(楽天証券の記載)
- 事前の対策は国民生活センターの4つ——ロック解除できるようにする/サービスを整理する/エンディングノートを使う/アクセスできる人を指名する。パスワードは名刺大の紙に書いて修正テープでマスキングし、削った跡で気づけるようにする手順が案内されている
- **AppleとGoogleの事前指名は、本人が生きているあいだにしか設定できない。**日本からのApple申請では、死亡証明書ではなく戸籍謄本が要る
終活全体の中でこの作業をどこに置くかは、終活でやることを緊急度別に3段階へ整理した優先順位マップを先に見ておくと決めやすくなります。デジタル終活は期限のある手続きではないぶん後回しにされがちですが、本人が元気なうちにしかできない数少ない項目です。
本記事は一般的な制度と手続の流れをまとめたものです。個別の判断は弁護士・司法書士・税理士など各分野の専門家、または各自治体の担当窓口にご確認ください。