相続土地国庫帰属制度で実家の土地を手放せる?|費用・却下要件と流れ

本記事にはプロモーション(アフィリエイトリンク)が含まれます。広告収益がどのサービスを取り上げるかに影響する可能性はありますが、比較の基準と評価は公的資料・公開料金に基づいて独自に決めています。 詳しい広告表記はこちら。

結論

相続した実家の土地を手放したい人は、売却の可能性と国庫帰属の要件を先に確かめ、工事を決める前に法務局へ相談しましょう。

国庫帰属は無料の引取りではなく、建物がある土地は原則として解体してから申請します。更地にしただけで承認が決まるわけではありません。

実家の土地を国に返す3ステップ図。1.建物がある実家は原則解体してから申請 2.審査手数料は1筆14,000円(却下・不承認でも返還されない)3.承認後、負担金は原則20万円(特定の宅地・農地・森林は面積計算)を納付。相続放棄は遺産全体が対象だが、国庫帰属は土地1筆ずつで建物は対象外という違いも示す

相続した実家の土地を「国に返す」ことはできますか?

相続土地国庫帰属制度とは、相続などで取得した土地を、承認と負担金の納付を経て国の所有に移す制度です。 2023年(令和5年)4月27日に施行され、それより前に相続した土地も対象に含まれます。

出典:法務省 相続土地国庫帰属制度の概要(2026年9月22日確認)。

以下、根拠法を「相続土地国庫帰属法」と呼びます。申請する人の資格、土地の状態、必要なお金を分けて整理しましょう。

誰が申請できますか?共有の土地はどうなりますか?

相続土地国庫帰属法2条1項の対象は、相続、または相続人として受けた遺贈で、土地の所有権の全部か一部を得た現在の所有者です。購入した土地や、相続で取得できない法人は原則として対象外です。

共有地では、同条2項により共有者全員での申請が必要です。相続等で持分を得た人がいれば、購入で持分を得た共有者も含めて共同申請できますが、反対する共有者がいれば申請には進めません。連絡担当を決める前に、誰と共同申請する土地なのかを整理します。

出典:e-Gov 相続土地国庫帰属法2条1項・2項(2026年9月22日確認)。

建物が建っている実家はどうなりますか?

相続土地国庫帰属法2条3項1号は、建物が存在する土地を申請対象から外しています。原則は「建物を解体してから、土地について申請する」順序で、未登記の建物でも現地に残っていれば同じです。

申請後すぐに解体する予定がある人には、法務省Q&Aは申請予定先の本局への相談を案内しています。「解体予定なら申請できる」という一律の例外ではありません。

物置小屋は建物でなく工作物として扱われることもありますが、管理に大きな費用や手間がかかるかの審査は残ります。

出典:法務省 相続土地国庫帰属制度に関するQ&A(2026年9月22日確認)。

解体を検討するときは、地中の基礎や浄化槽まで工事に含むかを分けて相談します。工事費の見積もり、補助制度、滅失登記の段取りは実家の解体費用と補助金の確認手順にまとめています。

申請できない土地・承認されない土地は何が違いますか?

却下は申請の前提に関する問題、不承認は審査で管理上の要件に適合しないと判断されることです。 更地かどうかだけでは足りず、権利、境界、地上・地下の状態を分けて見ます。

却下につながる土地の要件は何ですか?

相続土地国庫帰属法2条3項が挙げるのは、次の5つです。

  1. 建物がある土地。
  2. 担保権がある土地、または使用・収益のための権利が設定された土地。
  3. 他人の利用が予定される政令指定の土地を含むもの。施行令2条では、現に通路として使われる土地、墓地内、境内地、現に水道用地・用悪水路・ため池として使われる土地を挙げています。
  4. 土壌汚染対策法2条1項の特定有害物質による汚染が、省令で定めた基準を超える土地。
  5. 境界がはっきりしない土地や、所有権の有無・持ち主・範囲について争いのある土地。

出典:e-Gov 相続土地国庫帰属法2条3項、同法施行令2条(2026年9月22日確認)。

法務省は測量や境界確認書を一律には求めていませんが、申請者が考える境界の表示と、隣地所有者との認識一致・争いがない状態は必要です。測量の要否と、境界の争いの有無を混同しないようにします。

墓地内の土地は却下の対象です。お墓の整理は墓じまいの費用と自治体補助金の探し方を入口に、土地の申請とは分けて進めます。

出典:法務省 引き取ることができない土地の要件(2026年9月22日確認)。

不承認につながる管理上の要件は何ですか?

相続土地国庫帰属法5条1項の要件も、次の5つに分かれます。

  1. 勾配30度以上かつ高さ5m以上の崖があり、その通常の管理に過大な費用や労力がかかる土地。角度と高さだけでなく、管理負担の条件も含みます(施行令4条1項)。
  2. 地上の工作物・車両・樹木などが、普段の管理や処分を妨げる土地。
  3. 地下に、取り除かなければ通常の管理や処分を行えない物がある土地。
  4. 隣地所有者などとの争訟を経なければ普段の管理や処分ができず、政令の指定にも当てはまる土地。
  5. これら以外でも、管理や処分に過大な費用・労力を要し、政令の指定に当てはまる土地。

出典:e-Gov 相続土地国庫帰属法5条1項、同法施行令4条(2026年9月22日確認)。

地上の例は放置車両や倒れるおそれのある枯れ木、地下の例は基礎、コンクリート片、浄化槽、井戸などです。地下に物があれば一律に除去するという要件ではなく、通常の管理・処分を妨げるかが論点です。家本体を壊す工程と、地下に何が残るかの確認を分けます。

市町村森林整備計画に適合させるため、追加の造林・間伐・保育が必要な森林なども政令の対象です。更地に見えることだけで承認の見込みは判断できません。

出典:法務省 引き取ることができない土地の要件(2026年9月22日確認)。

費用はいくらかかりますか?

審査手数料は1筆14,000円、負担金は原則20万円で、特定の土地は面積計算です(2026年9月22日確認)。

項目額根拠返還・納付
審査手数料1筆14,000円施行令3条・施行規則5条却下・不承認・取下げ・負担金未納でも返還されない
負担金原則20万円。特定の宅地・農地と森林は面積計算法10条・施行令5条承認後に納付。納付した時点で土地が国の所有になる

出典:e-Gov 同法施行令3条・5条、同法施行規則5条(2026年9月22日確認)。

審査手数料は申請時、負担金は承認後という費用図。宅地・農地・森林のいずれにも属さない土地は負担金が原則20万円の定額。市街化区域内等の宅地、市街化区域等の農地、森林は地積×単価+定額の面積計算になる(法務省の算定表)

面積計算の対象は、次の区分です。そのいずれにも属さない土地が20万円の区分になります。

市街化区域外でも、用途地域の指定があれば宅地は面積計算です。宅地は現況と従前の用途から、直ちに建物の敷地に使えるかで区分します。

面積計算の対象となる宅地の式は次のとおりです。地積には登記記録の面積を㎡で入れ、算定額は円です。実測面積ではありません。

出典:法務省 負担金・同法施行令5条1項の算定表(2026年9月22日確認)。

例えば、市街化区域内の宅地で登記記録の地積が150㎡なら、150×2,450+303,000=670,500円。施行令5条2項による千円未満の切捨て後は670,000円です。これは負担金だけの計算例で、審査手数料や解体費を含む総額ではありません。

出典:e-Gov 同法施行令5条1項1号・2項(2026年9月22日確認)。

農地・森林は宅地と異なる算定表を使うため、法務省の負担金ページにある区分別の表と計算シートへ進みます。負担金は標準的な管理費の10年分をもとに決められ、納付は承認を受けた際の一度だけです。国がそれより長く保有しても、追加の納付は求められません。

出典:法務省 制度のQ&A(2026年9月22日確認)。

手続きはどう進み、どれくらいかかりますか?

土地所在地を管轄する法務局・地方法務局の本局へ申請します。法務省Q&Aの標準処理期間は8か月で、事案によっては長くかかります。

本局の不動産登記部門・登記部門が受付先で、支局・出張所では受け付けません。窓口への持参のほか、書留郵便での提出も可能です。

出典:法務省 制度の概要、法務省 制度のQ&A(2026年9月22日確認)。

進行を把握するときは、次の段階に分けます。

  1. 申請と手数料の納付:承認申請書と添付書類を提出する(法3条)。
  2. 書面・実地の調査:土地や権利関係を調べ、必要な聴取りや資料提出に応じる(法4条・6条)。
  3. 承認または不承認の通知:承認されると負担金の額も通知される(法9条・10条2項)。
  4. 負担金を納める:負担金の通知が届いた日の翌日から30日以内に納付する。期限内に納めなければ承認は失効する(法10条3項)。
  5. 国庫に帰属する:所有権が国へ移るのは、承認通知の到着時ではなく負担金を納めた時点(法11条1項)。

出典:e-Gov 相続土地国庫帰属法3条〜11条(2026年9月22日確認)。

本局への申請から国庫帰属までの5ステップ図(標準処理期間8か月)。1.申請と手数料の納付 2.書面・実地の調査 3.承認または不承認の通知(負担金の額も通知)4.負担金を納める(通知が届いた日の翌日から30日以内、期限内に納めなければ承認は失効)5.国庫に帰属する(負担金を納めた時点で所有権が国へ移る)

納付先は納入告知書で案内される日本銀行の本店・代理店・歳入代理店で、法務局へ現金を持参して支払う方法ではありません。未納で承認が失効した後、同じ土地の帰属を再び希望するなら、申請からやり直すことになります。

出典:法務省 負担金(2026年9月22日確認)。

共通の添付資料の例は、場所と範囲を示す図面、境界点の写真、土地の形状の写真、市区町村発行の印鑑証明書です。施行規則3条7号の、移転登記を国が嘱託することへの承諾書も必要です。

遺贈で取得した相続人にはその取得を証する書面、登記名義人と申請者が違うときには相続等を証する戸籍・遺産分割協議書などが加わります。共通書類と事情別の追加書類を分けて申請先と整理します。

出典:e-Gov 同法施行規則3条(2026年9月22日確認)。

登記の整理は相続した実家の名義変更と相続登記の義務化へ。国庫帰属の書類と、相続登記の手続きは分けて考えます。

実際にどれくらい引き取られていますか?

法務省の令和8年8月末(2026年8月31日)時点の速報値では、宅地の帰属実績もあります。却下・不承認・取下げでは、取下げが最多です。

出典:法務省 相続土地国庫帰属制度の統計(令和8年8月31日現在・速報値、2026年9月22日確認)。

取下げを全部「審査に落ちた件数」と読むのは誤りです。また、申請と帰属の時点がそろわず、処理中の案件もあるため、この数字から承認率は出せません。実績と、自分の土地の承認見込みは別の話です。

相続放棄や売却・寄附とはどう違いますか?

相続放棄は遺産全体を受け継がない選択、国庫帰属は相続した後の土地を手放す制度です。対象の範囲と、手続き後に残る義務を分けて比べます。

比較点相続放棄国庫帰属
期限自己のための相続開始を知った時から3か月以内(民法915条1項)相続後に申請。施行前の相続も対象
範囲相続財産全体。土地だけは選べない(民法939条)土地1筆ずつ。建物は対象外(法5条2項・2条3項1号)
義務・所有権放棄時に現に占有する財産は、相続人または相続財産の清算人へ渡すまで、自分の財産と同じ注意で保存(民法940条1項)負担金納付時に国へ所有権が移る(法11条1項)
費用申述用の収入印紙など。内訳は相続放棄の記事へ審査手数料と負担金。解体・撤去などは別

出典:e-Gov 民法915条1項、民法939条、民法940条1項、相続土地国庫帰属法2条・5条・11条(2026年9月22日確認)。

期限の起算点や申述の進め方は相続放棄のやり方と期限へ。国庫帰属を検討することを、放棄するかどうかの判断の先送りに使わないようにします。

売れる土地なら、まず売却の可能性を調べるのが順序です。法務省Q&Aも、国庫帰属以外の方法として民間での売買・贈与、地方公共団体等への寄附を挙げています。農地には農地中間管理機構、森林には森林経営管理制度を使う方法も紹介されています。

出典:法務省 制度のQ&A(2026年9月22日確認)。

家族で比べる軸は実家を売る・貸す・置いておく選択肢の比べ方へ。売る・貸す側の窓口として検討する実家の空き家バンク登録は、別記事に仕組みと自治体ごとの条件を委ねます。負担金などの税務上の扱いは税務署・税理士への相談事項です。

専門家に頼めますか?自分でも進められますか?

自分で申請し、書類作成などを専門家に頼めます。法務省は、親権者や成年後見人などの法定代理を除き、任意の第三者による手続き全体の代理は認めないと説明しています。

出典:法務省 専門家の活用等について(2026年9月22日確認)。

書類作成と現地対応は範囲を分けて見積もりを求めます。法務省に様式・記載例があり、作成した書類を相談時に見てもらうこともできます。実家が遠くても近くの本局で相談でき、ウェブ相談も用意されています。

相談は承認の約束ではありません。法務省Q&Aは次のように述べています。

相談の結果と審査の結果とが異なる可能性もあり得ます

出典:法務省 制度のQ&A(2026年9月22日確認)。

よくある質問

隣り合う土地が複数あると、負担金はまとめて計算できますか?

同じ種目で隣接している2筆以上の土地は、負担金の算定でひとまとまりとする特例を申し出られます(施行令6条)。申出の時期は申請書を出すときから承認までで、隣接していても宅地と森林のように種目が違えば対象外です。筆ごとの審査手数料とは別の特例です。

出典:法務省 負担金・合算の特例(2026年9月22日確認)。

却下や不承認の後、もう一度申請できますか?

理由となった具体的な問題を解消すれば、再申請できると法務省は案内しています。処分に不服がある場合の審査請求は、処分を知った日の翌日を起点に3か月以内という別の手続きです。

出典:法務省 制度のQ&A(2026年9月22日確認)。

申請した人が審査の途中で亡くなったらどうなりますか?

その土地を相続した人、または相続人として遺贈を受けた人は、相続等があった日から60日以内に申請先へ申し出ることで手続きを継続できます。期限の起点は相続等があった日で、申出がなければ申請は却下されると法務省は案内しています。

出典:法務省 制度の概要(2026年9月22日確認)。

まとめ

公式サイトで確認する

ミライアス

実家が首都圏(東京・埼玉・神奈川・千葉)にある場合は売却査定も選択肢となり、法務省も国庫帰属以外の方法として売買を挙げています(2026年9月22日確認)。