無縁墓になるとどうなる?|お墓の放置と撤去の手続き・管理料の滞納から始まる流れ
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親から引き継いだお墓が遠方にあり、何年も行けていない。管理料の請求書が実家に届いたままになっている。そういう状態が続くと、頭をよぎるのが「このまま放っておくと無縁墓にされて、撤去されてしまうのだろうか」という不安です。
インターネットで調べると「◯年放置すると撤去される」という説明が並びます。ところが根拠をたどっていくと、そこには年数の定めがありません。あるのは、国が全国の市町村に対して行った調査と、墓地の法律の施行規則、そして一つの高等裁判所の判断です。
この記事は、その3つを軸に「お墓を放置すると実際に何が起きるのか」を組み立てます。墓じまいの費用や補助金といったお金の話は墓じまいの費用相場と自治体補助金の探し方をまとめた記事にありますので、ここでは扱いません。
結論
「何年放置したら撤去される」という全国共通の年数はありません。墓地、埋葬等に関する法律の施行規則が定めているのは、無縁墳墓等を改葬するときに官報への掲載と立札の掲示を1年間行うという手続きであって、放置の年数ではありません。
規模はつかめています。総務省行政評価局が令和5年9月に公表した調査では、**公営墓地・納骨堂を有する765市町村のうち58.2%(445市町村)で、無縁墳墓等が1区画以上ある(疑いを含む)とされました。一方、平成28〜令和2年度の5年間に焼骨の移管や墓石の撤去まで至った市町村は6.1%(47市町村)**にとどまります。無縁墓は片付けられているというより、溜まっています。
ただし、それは放置してよい理由にはなりません。手続きが進めば墓地の使用権は失われ、遺骨の行き先を家族が選べなくなります。把握のきっかけの47.6%は管理料の滞納でした。承継する側にできることは、連絡先を更新すること、管理料を止めないこと、名義の承継手続きをすることの3つに集約されます。
出典:総務省行政評価局「墓地行政に関する調査 -公営墓地における無縁墳墓を中心として- 結果報告書」(令和5年9月)、e-Gov 墓地、埋葬等に関する法律施行規則3条(いずれも2026年8月13日確認)。


無縁墓(無縁墳墓)とは何ですか?
**無縁墳墓等とは、亡くなった人の縁故者がいない墳墓または納骨堂のことです。**日常語の「無縁墓」と近い言葉ですが、こちらは法令に定義のある用語です。
墓地、埋葬等に関する法律施行規則3条は、条文の冒頭で「死亡者の縁故者(死産の場合は、死児の縁故者。以下同じ。)がない墳墓又は納骨堂(以下「無縁墳墓等」という。)」と書いています。ここから分かることが2つあります。ひとつは、納骨堂も対象に含まれること。もうひとつは、死産の場合も想定されていることです。石塔の立ったお墓だけを指す言葉ではありません。
出典:e-Gov 墓地、埋葬等に関する法律施行規則3条(2026年8月13日確認)。
注意したいのは、「縁故者がいない」という状態を誰がどう認定するのかについて、条文が答えを持っていないことです。実際、後で見る総務省の調査では、無縁墳墓等の数を「疑いを含む」という数え方で集計しています。管理者の側から見ても、目の前の区画に縁故者がいないと言い切れる材料がそろわない、というのが実情なのです。
無縁墓はどれくらいあるのですか?
**公営墓地・納骨堂を有する765市町村のうち、58.2%にあたる445市町村で、無縁墳墓等が1区画以上ある(疑いを含む)と回答されています。**総務省行政評価局が令和5年9月に公表した調査報告書の数字です。
調査の規模を先に押さえておくと、この数字の意味が変わります。報告書は「全1,718市町村を対象に基礎調査を実施し(略)1,231市町村から回答を得た(回答率71.7%)」と書いています。回答した1,231市町村のうち、公営の墓地や納骨堂を持っているのが62.1%(765市町村)。58.2%という割合は、この765市町村を母数にしたものです。さらに88市町村については実地調査が行われています。
| 調査項目 | 割合(実数) | 母数 |
|---|---|---|
| 公営墓地・納骨堂を有する | 62.1%(765市町村) | 回答した1,231市町村 |
| 無縁墳墓等が1区画以上ある(疑いを含む) | 58.2%(445市町村) | 公営墓地等を有する765市町村 |
| 同上のうち「ない」 | 28.1%(215市町村) | 公営墓地等を有する765市町村 |
| 同上のうち「分からない」 | 13.7%(105市町村) | 公営墓地等を有する765市町村 |
| 人口30万人以上の市町村での発生率 | 78.9%(45市町村) | 同区分の57市町村 |
| 合葬式の墓を有する | 25.5%(195市町村) | 公営墓地等を有する765市町村 |
比較日: 2026年8月13日時点
出典:総務省行政評価局「墓地行政に関する調査 -公営墓地における無縁墳墓を中心として- 結果報告書」(令和5年9月)(2026年8月13日確認)。
読み間違えやすい点が3つあります。
1つ目は母数です。**58.2%は「無縁墓になっている区画の割合」ではなく、「無縁墳墓等を抱えている自治体の割合」**です。日本のお墓の6割近くが無縁墓になっている、という意味ではありません。
2つ目は「分からない」の存在です。13.7%(105市町村)が、自分の管理する墓地に無縁墳墓等があるかどうかを把握できていないと答えています。ここに、この問題の性質がよく表れています。
3つ目は調査の範囲です。報告書のタイトルは「公営墓地における無縁墳墓を中心として」で、対象は自治体が経営する墓地・納骨堂が中心です。寺院の墓地や民営の霊園でどうなっているかは、この報告書からは読み取れません。お墓の経営主体ごとの制度の違いは、永代供養と納骨堂の費用を公営の実額で整理した記事で扱っています。

無縁墓は、片付けられているのですか?
**ほとんど片付いていません。**同じ報告書によると、平成28年度から令和2年度までの5年間に、**焼骨の移管や墓石の撤去にまで至った市町村は6.1%(47市町村)**でした。母数は同じ765市町村です。
途中の段階まで含めても、数字はそれほど上がりません。官報への掲載まで行ったのが9.2%(70市町村)、無縁改葬の許可を得たのが7.6%(58市町村)。今後、無縁改葬を進める意向があると答えたのが22.1%(169市町村)です。
| 段階 | 5年間で到達した市町村 | 母数 |
|---|---|---|
| 無縁墳墓等がある(疑いを含む) | 58.2%(445市町村) | 公営墓地等を有する765市町村 |
| 官報への掲載まで行った | 9.2%(70市町村) | 公営墓地等を有する765市町村 |
| 無縁改葬の許可を得た | 7.6%(58市町村) | 公営墓地等を有する765市町村 |
| 焼骨の移管・墓石の撤去まで至った | 6.1%(47市町村) | 公営墓地等を有する765市町村 |
| 今後、無縁改葬を進める意向がある | 22.1%(169市町村) | 公営墓地等を有する765市町村 |
比較日: 2026年8月13日時点
出典:総務省行政評価局「墓地行政に関する調査」結果報告書(令和5年9月)(2026年8月13日確認)。数値は平成28〜令和2年度の5年間の実績。
この2つの数字を並べると、無縁墓という問題の形が見えてきます。**発生している自治体は半数を超えるのに、解消まで進んだ自治体は20分の1程度。**増え続けているというより、処理されないまま溜まっている、という言い方のほうが実態に近いことになります。
だから安心してよい、という話にはなりません。溜まっているのは手続きが重いからで、後で見るように、その重さは間違えて撤去したときの責任の重さから来ています。順番が回ってきたときに家族が何も選べない状態になっているかどうかは、それまでに何をしておいたかで変わります。

何をきっかけに「無縁」として扱われ始めるのですか?
**いちばん多いきっかけは、管理料の滞納です。総務省が実地調査を行った市町村のうち、調査日時点で無縁墳墓等が存在した42市町村への質問(複数回答)では、把握の端緒として管理料の滞納を挙げたのが47.6%(20市町村)**でした。
| 無縁墳墓等を把握したきっかけ | 割合(実数・複数回答) |
|---|---|
| 管理料の滞納 | 47.6%(20市町村) |
| 通常業務の見回り | 38.1%(16市町村) |
| 近隣区画の使用者等からの通報 | 31.0%(13市町村) |
| 使用者調査 | 23.8%(10市町村) |
| その他 | 26.2%(11市町村) |
比較日: 2026年8月13日時点
出典:総務省行政評価局「墓地行政に関する調査」結果報告書(令和5年9月)(2026年8月13日確認)。母数は実地調査を行った88市町村のうち、調査日時点で無縁墳墓等が存在した42市町村。
滞納そのものの規模も報告書に載っています。管理料を徴収している市町村は56.5%(432/765市町村・令和2年度)で、そのうち55.1%(238市町村)で滞納が発生しています。滞納総額は令和2年度末時点で4億4,798万1,283円、うち3億1,598万756円が過年度分でした。
出典:総務省行政評価局「墓地行政に関する調査」結果報告書(令和5年9月)(2026年8月13日確認)。
過年度分が7割を占めているという内訳は、滞納が単年で解消されずに積み上がっていることを示しています。請求書が届かなくなった時点で連絡が途切れ、そのまま年数だけが過ぎていく——端緒として管理料が挙がるのは、この構造の裏返しです。
なお、この報告書に載っているのは滞納の金額であって、管理料そのものの水準ではありません。**管理料が全国でいくらなのかは、この調査からは分かりません。**使用料と管理料の役割の違いについては、使用料と管理料を分けて読む考え方をまとめた記事で国の指針を引きながら説明しています。

お墓を放置すると、いつ撤去されるのですか?
「◯年で撤去できる」という期間の定めはありません。法令が定めているのは、無縁墳墓等を改葬するときに必要な書類であり、その書類をそろえるために官報への掲載と立札の掲示を1年間行うという手続きです。
墓地、埋葬等に関する法律施行規則3条は、無縁墳墓等の改葬許可の申請書に添付すべき書類として、次のものを挙げています。
一 無縁墳墓等の写真及び位置図 二 死亡者の本籍及び氏名(略)並びに墓地使用者等、死亡者の縁故者及び無縁墳墓等に関する権利を有する者に対し一年以内に申し出るべき旨を、官報に掲載し、かつ、無縁墳墓等の見やすい場所に設置された立札に一年間掲示して、公告し、その期間中にその申出がなかつた旨を記載した書面 三 前号の官報を出力した書面(略)及び立札の写真 四 その他市町村長が特に必要と認める書類
出典:e-Gov 墓地、埋葬等に関する法律施行規則3条(2026年8月13日確認)。
つまり、1年という期間は「放置していい年数」ではなく、管理者側が申し出を待つ公告の期間です。ふつうの改葬(施行規則2条)と並べると、この手続きの重さが分かります。
| 通常の改葬(施行規則2条) | 無縁改葬(施行規則3条) | |
|---|---|---|
| 添付する書類 | 埋葬・埋蔵・収蔵の事実を証する書面、申請者が墓地使用者等でない場合は墓地使用者等の承諾書等、その他 | 埋葬等の事実を証する書面に加え、無縁墳墓等の写真と位置図、官報公告と立札1年間の掲示を行い申出がなかった旨の書面、官報を出力した書面と立札の写真 |
| 必要な期間 | 書類がそろえば申請できる | 公告に1年かかる(申出を待つ期間) |
比較日: 2026年8月13日時点
出典:e-Gov 墓地、埋葬等に関する法律施行規則2条、同3条(いずれも2026年8月13日確認)。
総務省の報告書も、この違いを「無縁改葬に係る手続は、使用者その他の縁故者に対して1年以内に申し出る旨を官報に掲載し、かつ、立札に1年間掲示し、公告することが求められるなど、施行規則第2条に基づく通常の改葬手続に比べ、より慎重な手続が求められている」とまとめています。
さらに報告書は、無縁改葬の一般的な流れとして、厚生労働科学研究費補助金による研究報告書の整理を12の段階で引用しています。
①対象者の決定、調査整理簿等の作成、②現地調査、③立札の設置・掲示、官報への掲載、④在籍調査、⑤存命使用者への管理料の請求、⑥縁故者への承継指導、⑦取消対象者名簿の作成、⑧聴聞会の資料作成と関係者(名宛人:使用者・縁故者)への通知、⑨聴聞会、⑩使用許可の取消し、⑪無縁改葬手続、⑫改葬工事
出典:総務省行政評価局「墓地行政に関する調査」結果報告書(令和5年9月)(2026年8月13日確認)。報告書中の出典表記は「墓地埋葬行政をめぐる社会環境の変化等への対応の在り方に関する研究」平成27年3月 厚生労働科学研究費補助金 平成26年度総括研究報告書。

承継する側にとって重要なのは、⑥に縁故者への承継指導が、⑧⑨に聴聞が置かれていることです。撤去はいきなり来るのではなく、その前に呼びかけと意見を述べる場が制度上想定されています。逆に言えば、その呼びかけが届く連絡先を管理者が持っていなければ、家族の側は気づかないまま⑩の使用許可の取消しまで進むことになります。
なお、改葬の許可そのものは自治体の窓口で行う手続きです。書類に何を書くのか、添付書類はどこまで求められるのかは改葬許可申請書の書き方と自治体で分かれる添付書類をまとめた記事に整理しています。

手続きどおりに公告しても、撤去が違法になることはありますか?
**あります。**総務省の報告書は、手続きを踏んだうえでの改葬が不法行為とされた例として、平成26年の高松高等裁判所の判決を引用しています。以下は報告書に引用されている範囲です。
(略)本件墓地には本件改葬行為直前にも複数回にわたって墓参の形跡があったのであるから(略)このような墓地を無縁墓地として改葬を行い、墓石を撤去処分し、骨壺や遺骨を搬出するには、さらに相当期間をかけて使用者の有無について調査を尽くす義務があると解される。したがって、被控訴人が(略)調査義務を尽くさないで本件改葬行為を行ったことには過失があるというほかなく、本件改葬行為は本件墓地の使用者であったAに対する不法行為を構成するというべきである。
これに対し、被控訴人は、法や規則の手続に従ったなどと主張するが、改葬を行おうとする場合には、法や規則の定める手続を実施しなければならないというにすぎず、これらの手続を履践したからというだけで、永代使用権を消滅させることができるものではない。
墓地使用者が1年半程度の期間墓参せず、本件プレート等に気づかなかったり被控訴人から請求を受けないまま数年間管理料の支払をしなかったりしたことをもって、本件墓石の破壊・撤去という重大な結果を受忍すべきであるとはいえない
出典:総務省行政評価局「墓地行政に関する調査」結果報告書(令和5年9月)(2026年8月13日確認)。報告書の注記は「判例秘書システムによる。下線は当省が付した。」。この記事が確認しているのは報告書に引用されている範囲であり、判決の原文には到達していません。
ここから読み取れることは2つあります。
管理者の側から見ると、官報公告と立札の掲示を行ったという事実だけでは足りないということです。判決は、法や規則の手続を実施するのは当然のことであって、それを済ませたから使用権が消えるわけではない、と述べています。無縁改葬まで進む自治体が6.1%にとどまる理由の一端が、ここにあります。
承継する側から見ると、数年間管理料を払っていないというだけで撤去を受け入れなければならない、とは言えないということです。この判決では、1年半ほど墓参がなく、数年間の管理料の未払いがあった事例でも、撤去は不法行為とされました。だからこそ、「◯年放置すると撤去される」という年数の説明には根拠がありません。
ただし、これを「放置しても大丈夫」と読み替えるのは危険です。判決が問題にしたのは管理者が調査を尽くしたかどうかであって、使用者が支払いや届出をしなくてよいという話ではありません。裁判で争えたのは、撤去されたあとの話です。連絡が取れる状態を保っていれば、無縁墳墓等として扱われる入口に立たずに済みます。

遺骨を移したあと、墓石はどうなるのですか?
**墓石の扱いには、法律の定めがありません。**遺骨(焼骨)の移動については施行規則3条に手続きが用意されていますが、その後に残る石については、根拠となる規定が置かれていないのです。
代わりに関わってくるのが民法897条です。
第八百九十七条(祭祀に関する権利の承継) 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。 2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
出典:e-Gov 民法897条(2026年8月13日確認)。
報告書には、この点で困っている自治体の声がそのまま載っています。広島県呉市は「無縁墳墓の焼骨については、施行規則第3条に基づく無縁改葬手続に従って対応することになるが、その後の墓石の取扱いについては規定されていない。無縁改葬後の墓石は祭祀財産であると考えられるため、民法第897条に基づき、祭祀を主宰すべき者が承継することとなる。(略)このため、確認すべき縁故者の範囲は広範にわたり、当該墳墓を撤去した場合には財産毀損で損害賠償請求を受ける可能性がある」と述べています。
長野県辰野町は「墳墓等の承継の諾否を尋ねるべき親族の範囲及び縁故者からの回答を待つべき期間(縁故者調査の終期)の判断に自信がない。無縁改葬に伴う縁故者調査の範囲及び終期については、法及び施行規則に定めがなく、無縁墳墓のおそれがある区画の使用権取消しをしかねている」と回答しています。
出典:総務省行政評価局「墓地行政に関する調査」結果報告書(令和5年9月)(2026年8月13日確認)。
総務省はこの状況を受けて、厚生労働省に対し、無縁改葬後の墓石の取扱いについて保管期間や処分の考え方に係る事例を整理して提供するなど、地方公共団体への支援を行うよう要請しています。
出典:総務省「墓地行政に関する調査 <結果に基づく通知>」(令和5年9月13日)(2026年8月13日確認)。
一方で、独自の考え方で動いている自治体もあります。報告書と報道発表からは次のような例が挙げられています。
- 市町村が墓石を占有した時点で所有権を取得するという無主物先占の考え方を援用して、墓石を撤去している例
- 東京都:墓地・納骨堂の経営者と指定管理者から成る判定会の判断を経て、実施の可否を判断している例
- 兵庫県尼崎市:使用権消滅の決定に至った経緯を詳細に記録し、撤去前にあらかじめ墓石の評価額を算定しておくことで、撤去後のトラブルに備えている例
- 棹石(さおいし)だけを永年保管する例、一時保管ののちに処分する例(一時保管の期間としては20年、または期間を定めないとする例)
出典:総務省行政評価局「墓地行政に関する調査」結果報告書(令和5年9月)、総務省「墓地行政に関する調査 <結果に基づく通知>」(令和5年9月13日)(いずれも2026年8月13日確認)。
**「墓石は自治体が処分してくれる」と考えるのは、この現状には合いません。**扱いは自治体ごとに違い、保管される場合もあります。石の行き先まで含めて家族が決めたいのであれば、無縁改葬を待つのではなく、自分たちの手で墓じまいを進めるしかない、というのが制度上の帰結です。

自治体は、使用者や親族の連絡先をどこまで把握しているのですか?
**使用者の情報はかなり把握できていますが、その親族(縁故者)の情報はほとんど持っていません。**この差が、無縁改葬の手続きを止めている実務的な原因です。
報告書によると、使用者に関する情報は「平成11年の施行規則の改正によって、帳簿にその住所、氏名等を記載することが明記された」もので、実地調査を行った88市町村のうち80.7%(71市町村)が「80%以上」把握できていると答えています。
ところが縁故者に関する情報は「帳簿の記載事項とはされておらず」、同じ80.7%(71市町村)が「20%未満」しか把握できていないという結果でした。縁故者の住所や電話番号をあらかじめ把握している市町村は**10.2%(9市町村)**にとどまります。
| 把握の対象 | 帳簿への記載 | 把握状況(実地調査88市町村) |
|---|---|---|
| 墓地の使用者 | 平成11年の施行規則改正で住所・氏名等の記載が明記されている | 80.7%(71市町村)が「80%以上」把握できていると回答 |
| 使用者の縁故者 | 記載事項とはされていない | 80.7%(71市町村)が「20%未満」と回答。住所や電話番号をあらかじめ把握しているのは10.2%(9市町村) |
比較日: 2026年8月13日時点
出典:総務省行政評価局「墓地行政に関する調査」結果報告書(令和5年9月)(2026年8月13日確認)。
そして報告書は、情報が古くなる仕組みについてこう書いています。「一般に、使用者の死亡に伴う情報の更新は、その承継者等による変更申請に基づいて行われるが、市町村が必要な手続を行うよう住民への周知に努めても、必ずしも行ってもらえない」。名義人が亡くなったことを、自治体が自動的に知る仕組みはないわけです。
そこを埋めようとしている自治体の例も載っています。新潟県津南町は令和2年度から毎年7月頃に町営墓地の使用者へ「町営西山墓地使用者情報について(お願い)」を郵送し、変更の届出を求めています。令和3年度は124人へ送付して10人から使用者住所氏名等変更届や使用権承継承認申請書が提出されました。長崎県佐世保市は使用料システムを住民基本台帳と連携させ、毎月使用者の死亡や住所変更を確認し、死亡が確認されたら判明している縁故者の住所へ承継依頼を送付しています。
なお、使用者情報の網羅的な調査を実施したことがある市町村は、平成28〜令和2年度で**31.9%(244/765市町村)**でした。
出典:総務省行政評価局「墓地行政に関する調査」結果報告書(令和5年9月)(2026年8月13日確認)。
津南町の数字は示唆的です。案内を送って初めて、124人のうち10人から届出が出てきた——つまり残りの114人については、その年は情報が更新されていません。案内が来なければ動かない、という前提で制度が回っていることになります。

承継する側として、今できることは何ですか?
**やることは3つです。連絡先を更新すること、管理料を止めないこと、名義の承継手続きをすること。**いずれも、ここまで見てきた一次資料からそのまま導けます。

- **墓地の管理者に届け出ている連絡先が今も生きているか確認する。**自治体は変更届が出ないことに困っており、縁故者の連絡先を持っているのは10.2%にすぎません。実家の固定電話や、すでに引き払った住所が登録されたままになっていないかを確認してください
- **管理料の支払いを止めない。**無縁墳墓等の把握の端緒の47.6%が管理料の滞納です。支払いが難しい事情があるとしても、放置ではなく窓口に相談する形にしておけば、連絡が取れる相手として扱われます
- **使用権の承継(名義変更)の手続きをする。**名義人が亡くなったことを自治体が自動的に知る仕組みはありません。承継の届出を出しておけば、通知の宛先が現在の家族になります
手続きの名前と様式は、自治体ごとに違います。前に挙げた「使用権承継承認申請書」は津南町での名称であり、**全国共通の様式ではありません。**自分のお墓がある市区町村の墓地担当課、寺院墓地なら管理者に、名称と必要書類を直接尋ねるのが早道です。
墓地の名義は、相続の手続きと絡むこともあります。期限のあるものから順に並べた全体像は相続手続きの期限を7日・3か月・10か月・3年に分けたチェックリストにまとめています。

承継が難しいときは、どの選択肢がありますか?
**自分たちで墓じまい(改葬)をして、遺骨の行き先を選ぶことです。**無縁改葬を待つと、遺骨の移し先も墓石の扱いも管理者の判断になります。先に動けば、そこは家族が決められます。
費用の内訳、移し先ごとの金額、自治体の補助制度の探し方は墓じまいの費用相場と自治体補助金の探し方をまとめた記事に、実際に補助制度が確認できた自治体と「制度はありません」と公式に案内している自治体の実例は墓じまいの補助金がある自治体を調べた記事にあります。お墓に関する記事はお墓・供養の記事一覧からも探せます。
もうひとつ、手続きの要否について押さえておきたい点があります。総務省の報告書には「法に照らした運用上の疑義に対する厚生労働省の見解」という表が収められており、市町村からの質問に厚生労働省が答えた内容が並んでいます。そのうち2つが、墓じまいを考える人に直接関わります。
| 市町村からの疑義 | 厚生労働省の見解(報告書に載っている文言) |
|---|---|
| 墓じまいで取り出した焼骨を、ⅰ)自宅に安置する ⅱ)散骨する場合、改葬許可は必要か | 「改葬許可は必要ない。」 |
| 同一の墓地内で、別の区画へ焼骨を移す場合、改葬許可は必要か | 「改葬許可が必要である。」(法2条3項は改葬を焼骨を「他の墳墓」に移すこととしており、「他の墓地」に移すこととはされていないため) |
比較日: 2026年8月13日時点
出典:総務省行政評価局「墓地行政に関する調査」結果報告書(令和5年9月)表4(2026年8月13日確認)。
前者は意外に感じるかもしれません。自治体のページは「改葬には許可が必要」と読める書き方をしていることが多く、遺骨を自宅に持ち帰る場合も許可が要ると理解されがちです。**この記事が示せるのは「総務省の調査報告書に載っている厚生労働省の見解では、改葬許可は必要ないとされている」という事実までです。運用は市区町村ごとに違いますので、動く前に必ず窓口へ確認してください。**後者のほうは、同じ墓地の中の移動でも許可が要るという内容で、自治体の案内と同じ方向です。許可申請の実務は改葬許可申請書の書き方をまとめた記事に整理しています。
墓石の撤去工事は、見積もりの内訳(人件費・処分費・車両費・重機の使用料など)が業者によって差の出やすい部分です。相場の見当をつけたい段階なら、墓じまいパートナーズに墓じまいの手続きと費用を問い合わせる方法もあります。石材店から直接見積もりを取りたい場合は、墓石ナビで墓石の撤去工事の見積もりを取り寄せる
こともできます。いずれの場合も、改葬許可の申請と墓地の返還の手続きは自治体・管理者への届出として別に必要です。
移し先の制度と金額を先に知っておきたい場合は、永代供養と納骨堂の費用を公営の実額で整理した記事に、公営の合葬墓の使用料や「永代」という言葉が指す期間の実態をまとめています。

よくある質問
お墓を何年放置すると、無縁墓として撤去されますか? 放置の年数を定めた規定はありません。墓地、埋葬等に関する法律施行規則3条が定めているのは、無縁墳墓等を改葬する際に官報へ掲載し、立札を1年間掲示して申し出を待つという手続きです。総務省の報告書が引用している平成26年の高松高等裁判所の判決では、1年半ほど墓参がなく数年間の管理料の未払いがあった事例でも、墓石の撤去は不法行為と判断されています。年数で線を引ける問題ではありません。
管理料を滞納すると、すぐに無縁墓として扱われますか? すぐに扱われるわけではありませんが、滞納は自治体が無縁墳墓等に気づく最も多いきっかけです。総務省の実地調査では、調査日時点で無縁墳墓等が存在した42市町村のうち47.6%(20市町村)が、把握の端緒として管理料の滞納を挙げています。支払いが難しい場合は放置せず、墓地の管理者に相談して連絡が取れる状態を保つほうが安全です。
寺院のお墓や民営の霊園でも、同じことが起きますか? この記事が根拠にしている総務省の調査は「公営墓地における無縁墳墓を中心として」というタイトルで、対象は自治体が経営する墓地・納骨堂が中心です。寺院墓地や民営霊園の実態は、この報告書からは分かりません。一方、施行規則3条の無縁改葬の手続きは経営主体を限定していないため、手続きの枠組み自体は共通です。個別の運用は、その墓地の管理者に確認してください。
墓じまいをして遺骨を自宅に置く場合や散骨する場合、改葬許可は必要ですか? 総務省の調査報告書に載っている厚生労働省の見解では「改葬許可は必要ない。」とされています。ただし運用は市区町村ごとに違うため、事前に墓地がある市区町村の窓口へ確認してください。逆に、同じ墓地の中で別の区画へ焼骨を移す場合については「改葬許可が必要である。」とされています。
無縁改葬の手続きが始まったら、家族に知らせは来ますか? 報告書が引用する無縁改葬の流れには、縁故者への承継指導と、使用許可の取消しの前に行う聴聞が含まれています。制度上は呼びかけと意見を述べる場が想定されています。ただし縁故者の連絡先をあらかじめ把握している市町村は10.2%(実地調査88市町村中9市町村)にとどまるため、届け出ている連絡先が古いままでは通知が届かないおそれがあります。
出典:総務省行政評価局「墓地行政に関する調査 -公営墓地における無縁墳墓を中心として- 結果報告書」(令和5年9月)、e-Gov 墓地、埋葬等に関する法律施行規則3条(いずれも2026年8月13日確認)。
まとめ
- 「◯年放置すると撤去される」という年数の定めはない。施行規則3条が定めているのは、官報への掲載と立札の1年間の掲示という手続き
- 総務省行政評価局の調査(令和5年9月公表)では、公営墓地・納骨堂を有する765市町村のうち58.2%(445市町村)で無縁墳墓等が1区画以上ある(疑いを含む)。「分からない」も13.7%(105市町村)ある
- **58.2%は自治体の割合であって、区画の割合ではない。**また調査は公営墓地が中心で、寺院墓地・民営霊園の実態は分からない
- 5年間(平成28〜令和2年度)で焼骨の移管・墓石の撤去まで至ったのは6.1%(47市町村)。無縁墓は片付いているのではなく溜まっている
- 把握の端緒の47.6%が管理料の滞納(実地調査で無縁墳墓等が存在した42市町村・複数回答)。滞納総額は令和2年度末で4億4,798万1,283円、うち3億1,598万756円が過年度分
- 総務省の報告書が引用する平成26年の高松高裁判決では、手続きを踏んでも調査を尽くさない撤去は不法行為とされた。手続きの履践だけで永代使用権は消えない
- 墓石の処分には法律の定めがない(民法897条の祭祀財産)。自治体は損害賠償のリスクを抱えており、扱いは自治体ごとに違う
- 自治体は使用者の情報は8割以上把握している一方、縁故者の連絡先を持っているのは10.2%(実地調査88市町村中9市町村)
- 承継する側にできることは、連絡先の更新・管理料を止めない・使用権の承継手続きの3つ。手続きの名称と様式は自治体ごとに違う
お墓の放置は、ある日突然の撤去としてやって来るものではありません。連絡が取れなくなった時点から静かに始まって、気づかないうちに選択肢が減っていくというのが、一次資料から見える形です。逆に言えば、届出の宛先を今の家族に直しておくだけで、選べる余地は残ります。
本記事は一般的な制度と手続の流れをまとめたものです。個別の判断は弁護士・司法書士・税理士など各分野の専門家、または各自治体の担当窓口にご確認ください。